リニア問題で静岡県民ら107人が工事差し止め訴訟を提起
樫田秀樹|2020年12月1日11:30AM
【名産・茶農家からも原告が】
原告107人のうち、静岡県民は101人。そのうち、中下流域8市2町の住民は67人で、実際に大井川の水を利用する農業者は12人だ。そのうちの2人が今回の原告団の共同代表に就任した。
大石和央さん(65歳)は、静岡のなかでも茶葉の名産地である牧之原市の茶農家だが、JR東海の主張に不安を抱く。JR東海は「上流部での工事は中下流域の地下水には影響しない」と明言しているからだ。
大石さんは、提訴後の集会で「牧之原市では水源の100%が大井川の水。おいしい茶葉を作るため減水はあってはならない」と訴え、もう1人の共同代表である、島田市の稲作農家の桜井和好さん(70歳)も「JR東海は影響ないと言うが、もし中下流域で水が枯れたら水は返ってこない。その不安が払しょくされない以上は、声を上げるしかない」と明言した。
弁護団の事務局長、西ヶ谷知成弁護士は、「県民の生活を守る」ことと「南アルプスを守る」ことを裁判の二本柱にするとしたうえで、「困ってしまう住民の声をしっかりと届けたい」と説明した。
JR東海は、かつて、リニア計画への反対意見の多かった長野県大鹿村で「住民が理解を得たかどうかは事業者(JR東海)が判断する」と表明し、実際に住民説明会後の囲み取材で、その説明会でも反対意見や慎重意見が多数出たにもかかわらず、記者団に「住民の理解は進んだ」と発言し、起工への準備を進めた過去がある。
しかし「オール静岡」体制のなかでは、そういう判断は許されず、連絡会議と裁判の両方で議論を詰めることが求められる。
原告団は、今後も、追加の原告と裁判を資金面で支えるサポーター(初年度3000円)を募集するとのこと(問い合わせは事務局・芳賀氏あて。FAX 054・283・8882。Mail ahnhaga@gmail.com)。静岡地裁での第1回口頭弁論は21年1月15日14時半から行なわれる予定だ。
(樫田秀樹・ジャーナリスト、2020年11月20日号)