オンブズマン活動の新人議員に辞職勧告決議
愛知県弥富市議会
井澤宏明|2020年12月3日11:57AM
「オンブズマン活動を続けるなら議員辞職を」――。愛知県弥富市議会(定数16)が新人議員に対し異例の辞職勧告を決議し物議を醸している。名古屋市民オンブズマンは11月13日、大原功議長に「市議会正常化を求める請願書」を提出、事実上の決議撤回を求めた。
辞職勧告を受けたのは今年2月に初当選した無所属の加藤明由議員(67歳)。2006年からオンブズマン活動を続けてきた。市の新庁舎建設を巡り市に損害賠償を求める住民訴訟を起こしていたが7月、名古屋地裁で却下された。
9月23日の決議では、この訴訟により新庁舎着工が遅れたとして「市に多大な負担を強いる結果となった事態の重大さを真摯に受け止め、直ちに辞職することを勧告する」と断じた。「地方議会は地方行政の一翼を担う側面があり、議員がオンブズマン活動を行うことは本来の趣旨に合致しない」とし「活動に専念されるのであれば辞職していただきたい」と迫った。
これに対し加藤議員は「辞めるつもりはないし、今まで以上にオンブズマン活動をやっていく」と一歩も引かない構えを見せる。
名古屋市民オンブズマン代表の新海聡弁護士は「オンブズマン活動は民主主義を補完し、地方公共団体のプラスになるから、住民監査請求も住民訴訟も地方自治法で認められている。行政監視する人は議員になれないというのは市民の行動を制約するもの」と憤る。
提出した請願書では辞職勧告を「議会のチェック機能を放棄する宣言」と非難。議員や議員になろうとする人が自由に住民監査請求や住民訴訟を起こすことができるよう決議することを求めている。
加藤議員の監査請求により、大原議長所有のアパートの壁が市有地にはみ出していた問題も発覚、市と議長が法廷で争う。辞職勧告を主導したのは議長が所属する最大会派「政新会」。加藤議員への意趣返しの意味合いが強そうだ。
(井澤宏明・ジャーナリスト、2020年11月20日号)