日本学術会議任命拒否の岡田教授、権力の暴走に危機感
本田雅和|2020年12月14日7:08PM
「違憲違法でも権力は何でもできると居直っているのが現状だ」
法曹・学者3団体主催の司法制度研究集会「今の司法に求めるもの」が11月14日、東京都内で開かれ、最高裁判事の任命手続きが時の政権に政治支配されている現状について改革案を議論した。日本学術会議会員への就任を拒まれた当事者の岡田正則・早稲田大学教授(行政法)がゲスト発言し、司法人事への政治介入との相似を強調した。
『朝日新聞』で長年、憲法問題に取り組んできた豊秀一・編集委員が基調報告し、近代憲法が達成した「法の支配」が学術会議会員任命拒否問題に典型的に見られるように「人の支配」に変質していることを指摘。「法の終わるところ、専制が始まる」(ジョン・ロック)と警鐘を鳴らした。
学術会議問題について豊氏は日本学術会議法が会員数210人を明確に規定し(欠員状態が違法となる)、会議側が候補者を推薦すること、会議の独立性などを保障していることなど、同法が「政治介入の防波堤」になることを説明。一方で、最高裁判事は「内閣でこれを任命する」としか規定がないことからくる懸念を表明した。
主催者団体の一つ、青年法律家協会(青法協)弁護士学者合同部会の元議長、梓澤和幸弁護士は、自らの司法修習生時代に裁判官志望者への大量任官拒否があったことや、その経緯を当局に質した同期生が罷免された経験を披露。「当時の石田和外・最高裁長官が戦前の治安維持法下で予審判事として思想を裁いてきた経歴を隠し、戦後は戦争責任を問われぬまま司法官僚の階段を上り詰めてきた結果だ」と断じ、「こうした事実を歴史の中に位置づけ、忘れない覚悟、忘れさせない覚悟が必要ではないか」と問いかけた。
さらに「最高裁判事は判例を作るだけでなく、2千数百人の全国の判事の人事を支配し、判決の内容に大きな影響を与えている」と訴え、裁判所が「人権を守る砦」となりにくい構造を説いた。