生殖補助医療法案に研究者ら意見表明
「出自を知る権利」重視せよ
岩崎眞美子|2021年1月4日3:11PM
【20代以降に知る例が多数 親との関係が悪化する場合も】
すでに始まっている精子・卵子提供の商業的あっせんの中で行なわれるであろう遺伝子検査による優生学的選別の問題、生殖補助医療が独身女性や同性カップルも利用できるようになるのか、など、十分に議論されていない課題は山積している。
会見にはAIDで生まれた当事者グループから石塚幸子さんと、藤田あやさん(仮名)も登壇。AIDで生まれた当事者は20代を過ぎてから事実を知らされる場合が多く、それまで積み重ねていた自分自身が崩れるような感覚を体験するという。自分の遺伝情報が欠けていることによる医療受診時の不安。同じ精子で生まれた相手との近親婚の可能性は……。怒りや不信感で親との関係が悪化する例も多い。
「生殖補助医療を受けてまで、望まれて生まれたんでしょと言われることもある。でも、生まれを知らされない、出自を知ることができないのは、人間として軽く扱われていると感じます」(藤田さん)
「出自を知る権利には2段階あって、まずは親が子にAIDで生まれたと伝えること。そのうえで、子どもが提供者の情報を知りたいか知りたくないか、選べるようにする必要があります。知りたいと思った時にはアクセスできる環境を整えるべきですし、そのためにも法律で権利を認め、提供者情報の保存はすぐにでも始めてほしい。それができないのであれば、この技術は行なわれるべきではないと思っています」(石塚さん)
(岩崎眞美子・ライター、2020年12月4日号)