旧優生保護法で「不妊」にされた障害者らによる国賠訴訟
「除斥期間」理由に請求棄却
粟野仁雄|2021年1月6日5:26PM
旧優生保護法による不妊手術で子どもができなかった関西在住の男女3人が国に損害賠償金計5500万円を求めた訴訟で11月30日、大阪地裁(林潤裁判長)は請求の時期を逸しているという「除斥期間」を理由に棄却した。判決は仙台、東京地裁に次いで3例目で、いずれも棄却された。
原告の70代の女性と80代の夫(ともに聴覚障害)は手話通訳を交えて記者会見。「時間が過ぎたからというのは納得できない。苦しみはいつまでも消えない」と訴えた女性は1974年の帝王切開での出産時、知らない間に不妊手術を施されていた。夫は「元気な子が生まれ、医師から旦那さんそっくりと言われて喜んだが翌日、死んでいた。その後、まったく子どもを授からなかった」「国が違憲の法律を作ってしまったために私たち夫婦は当たり前の家庭を築くことができなかった。裁判所は長年の苦しみを理解していない。怒りが収まらない」などと話した。
知的障害のある77歳の原告女性の姉は「妹は長い間苦しんだ。請求が認められず大変残念に思う」とのコメントを出した。この女性は20代の頃に何も知らされずに不妊手術をされていた。
林裁判長は「もっぱら優生上の見地から不良な子孫を出生させない目的の下、特定の障害や病気のある人を一律に『不良』と断定する極めて非人道的で差別的なもの」として、初めて旧法を「法の下の平等」を規定した憲法14条に違反するとした。原告代理人の辻川圭乃弁護士は「仙台地裁より踏み込んだことは評価できる」としたが、「旧法を非道としながら法の安定を優先したことに強い憤りを感じる」と語った。
全国で約2万5000人の女性が不妊手術をされたとされる旧優生保護法は、1948年に成立し96年に強制不妊手術の規定を削除して「母体保護法」へ改正された。
(粟野仁雄・ジャーナリスト、2020年12月11日号)