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防衛大学校の虐待体質を司法が糾弾、国の責任認める
福岡高裁
三宅勝久|2021年1月7日6:31PM
【横浜でも元防大生が提訴】
納得がいかないAさんは暴行を加えた上級生らを刑事告訴。うち3人が罰金刑の有罪判決を受ける。しかし、学校は責任を完全に否定。加害者たちの態度も真摯な反省と謝罪にはほど遠かったため、上級生ら8人と国を相手どって訴訟を起こす。16年3月のことだった。一審の福岡地裁判決(19年2月および10月)は被告8人のうち7人については責任を認め、それぞれ5万円?40万円の計95万円の賠償を命じた。一方、被告国に対しては「教官は〝粗相ポイント〟制度を知らなかった」「(虐待について)予見できなかった」といった理由で責任を否定した。証人尋問で教官は「粗相ポイント制度など知らない」とあからさまにウソとわかる証言をしたが、福岡地裁はそれを鵜呑みにした。
控訴審では、防大の内部調査資料を慎重に検証した。いじめや暴力が蔓延しており、Aさんの事件が偶然ではないことを資料は物語っていた。
「教官は、上級生がAさんに暴力を振るったり精神的苦痛を与えたりしてはならない旨の適切な指導をすることが可能だった」
控訴審判決は教官の責任に踏み込んでそう述べている。防大を退学後、Aさんは一般の大学に入りなおし、法律を勉強している。勝訴の日、各地から集まった支援者を前に静かな口調で語った。
「はじめは加害者の学生に対してうらみとかそういう思いが強くありました。だが彼らも防大の仕組みによって作られた人格、行動だと思うようになり、仕組み自体を変えないといけないという気持ちになってきた。判決を機に防大が変わることを願っています」
防衛省は取材に「国の主張が一部認められなかったものと重く受け止めている。判決内容を慎重に検討し関係機関と十分調整の上、適切に対応する」と回答した。
なお、横浜地裁でも、いじめを受けた防大の元学生が損害賠償請求訴訟(岡田尚弁護団長)を起こしており、審理が続いている。
(三宅勝久・ジャーナリスト、2020年12月18日号)
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