元役員の慰労金訴訟で再浮上した山口放送「CM不正」疑惑
2021年1月15日1:14PM
【山口放送の言い分の苦しさ】
緊急動議に至った背景を探っていくと、二十数年前に社会問題化したCM不正(CMの間引き放送、放送時間帯のランクダウン、放送確認書不実記載など)の問題に辿り着く。1997年に福岡放送(日本テレビ系)と北陸放送(TBS系)で、99年になり静岡第一テレビ(日本テレビ系)で発覚し、広告主や広告会社を巻き込む大騒ぎになった。この時、実は山口放送でも類似のCM不正問題を抱えていて、それが秘匿された旨を告発する文書が登場した。山口放送の将来を案じる赤瀬氏が作成したもので、実名で日本テレビ、山口県、周南市などの大株主に送られた。その前に経営上層部に訴えたが響かず、告発に踏み切ったのだった。
この告発に、電通の旧テレビ局(広告枠買い付けなどを担当)系の幹部が「事実無根、法的措置も……」と、かなり早い段階で口にしていたそうだ。だが、結局山口放送側にその動きは見られなかった。逆に赤瀬氏の方が提訴し、主張の正当性を訴えることになった。
対する山口放送側は、CM不正は存在せず赤瀬氏の主張は「虚偽」である、その告発は山口放送などの「信用・名誉を棄損」し「取締役の忠実義務に反する背信行為」であり、役員慰労金の不支給は不当ではない――と主張している。
一方で山口放送は、赤瀬氏側がCM不正の証拠の一つとして提出したロッテのCMに関わる書証に対し「契約時の決定案通りの放送通知書を発行することが広告会社の指示であると認識」していたなどとしている。が、これは乱暴な反論だ。仮に広告会社の指示があったとしても、放送確認書(通知書)には放送実績を記載するのが大原則だ。広告会社も「指示」を否定している。また、当時の資料は何も残っていないと日本アドバタイザーズ協会などに説明していたが、提訴されたらキューシート(その日放送する全番組とCMを放送時間順に記載)が出てきたという。これに基づいて調べた結果、CM放送が適正に行なわれていたことを確認したとも述べている。しかしCM不正の存否は枠取りデータ(契約データ)や放送確認書などとの突き合わせが必須だから、これも苦しい言い訳に聞こえる。
赤瀬氏は、次のように話す。
「山口放送を守るため、そして私に対する役員慰労金の不給付という不当な仕打ちもあり、残された最後の手段として裁判に訴えることにしました。当然、勝ちに行きますし、勝てる裁判だと確信しています」
山口放送は前記主張を「裁判で明らかにしていく」と回答した。
(丸山昇・ルポライター、2020年12月25日号)