国際協力NGOが医療施設などを緊急調査
日本の医療逼迫浮き彫りに
本田雅和|2021年1月21日6:06PM
新型コロナウイルスの感染拡大「第3波」を受け、国際協力NGOのピースウィンズ・ジャパン(PWJ、本部広島県、大西健丞代表)など3団体が全国の医療・福祉施設に緊急調査を実施。国内外で災害支援に取り組んできたPWJ所属の救急専門医・稲葉基高さんや外科医・坂田大三さんらが12月17日の記者会見で発表した。
調査対象として選ばれたのは、これまで関連NGOが「医療崩壊は街の小さな施設から起こる」との危機感から優先的に支援してきた小規模診療所や介護・福祉施設を中心に約3600施設。12月14日~16日のわずか3日間で622機関・施設から有効回答を得た。
第3波で一番困っている点として、医療機関ではコロナを恐れて慢性基礎疾患などの一般患者が来院しなくなるなどの「患者減少=収益減少」、「通常外来と発熱外来の区別・両立」や医療スタッフの「感染の恐れ、精神的疲れ」などによる「看護師の離職」。福祉施設では食事や排せつの介護行為自体が必然的に濃厚接触になる中での「人員不足」「物資不足と価格高騰」「発熱者発生時の対応やPCR検査実施の判断」「面会中止による利用者の精神的不安」「長期戦への疲れ」などが挙がった。
今後2カ月程度の短期的ニーズとして一番に上がった支援物資とは、初期のマスクより医療用手袋や消毒用アルコール、ビニール製ガウンやエプロンなどだった。
稲葉医師は「この1~2週間で救命救急センターや2次救急ともに切迫感が一挙に増してきた」と指摘。大阪市内の病院の救急治療室の責任者、夏川知輝医師は「日本の公的支援は実際に動き出すのが遅い。第1波対応予算の現場での執行は第2波終わり頃。公平性を重視するあまり本当に必要なところに少なく、不必要なところにも物資を配布したりする。民間やNGOの支援は小規模でも迅速で柔軟。テントもマスクも要請後1週間程度で届いた」と感謝した。
(本田雅和・編集部、2020年12月25日号)