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感染症法が改正
「入院拒否で罰則なんて!」
吉田啓志|2021年3月1日1:07PM
新型コロナウイルス対策の関連法案として、都道府県知事の入院措置に従わない陽性者への罰則導入を柱とする感染症法改正案などが2月3日にも成立する見通しとなった(編注:2月3日成立。2月13日施行)。自民党が原案にあった入院拒否者への懲役刑を立憲民主党との修正協議で引っ込め、他の刑事罰も行政罰へと軽くしたからだ。それでも泥縄で作った法案だけに罰則導入の根拠は曖昧なまま。実効性にも疑問符がついている。
法改正の機運が高まったのは昨年末。当初、政府は罰則強化には腰が引けていて、コロナ禍の収束後に先送りする意向だった。ところが昨秋以降の感染再拡大に伴い、知事らは実効性を持たせる手段として国に「罰則と補償」の法律への明記を迫った。自民党幹部は「コロナの後手後手批判を挽回しようとしたのも『強硬姿勢』に転じた理由の一つ」と漏らす。
感染症法における他の刑罰とのバランスをとる意味合いからも政府原案には強い罰則が並んだ。入院拒否は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」、感染経路調査の拒否は「50万円以下の罰金」。また、コロナ対応の特別措置法改正案では緊急事態宣言に至る前段の「蔓延防止等重点措置」を新設した。宣言前でも知事は事業者に営業時間短縮を命じることができ、従わなければ過料を科す。
だが、行政罰の過料と違い罰金は刑事罰だ。与党内からも「入院拒否で前科がつくなんて」と異論が出たほか、「感染者個人に責任を負わせることは倫理的に受け入れがたい」(日本医学会連合)「(ハンセン病患者を差別した)歴史的教訓に学ばず、感染者・患者の基本的人権を脅かす」(ハンセン病違憲国賠訴訟全国弁護団連絡会)などと強い批判を浴びた。
政府は「抑止力」を盾に突破を図ろうとした。が、入院拒否の事例を問われても病院を抜けて温泉に行った人の一例を挙げるだけ。田村憲久厚生労働大臣は対象事例を把握していないと認め、立法根拠は揺らいだ。そこへ自公両党議員が緊急事態宣言中に東京・銀座のクラブを訪れていたことが発覚。政府・与党は刑事罰導入を断念し修正に応じた。入院拒否は「50万円以下の過料」に改められ、感染経路調査の拒否も「30万円以下の過料」へ。他の過料も減額された。