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感染症法が改正 
「入院拒否で罰則なんて!」

吉田啓志|2021年3月1日1:07PM

【逆にクラスター誘発も?】

ただ、修正案も罰則で縛ることに変わりはない。特措法案は要件がハッキリしないのに、緊急事態宣言前から私権を制限できる。

感染症法改正案には不足する入院病床の確保に向け、知事が病院に患者の受け入れを「勧告」できる規定も盛り込まれている。従わない病院名の公表も可能だ。

神奈川県内に住む40代の独居男性は昨年末に39度の熱が出て、PCR検査をすると陽性だった。しかし病床に空きはなく、入院できるまで8日を要した。この間は息苦しくなる夜もあったといい、「死の恐怖を感じた」と話す。

陽性なのに満床で入院できない人は東京だけで6000~7000人に達する。100床未満の民間病院は陽性者の受け入れ率が1割に満たない。改正法案は風評被害や減収を恐れて陽性者を拒む病院に「病院名を公表する」と脅しをかけるものだが、こちらも慎重論が相次いでいる。

対応力がある病院は、民間でも大半が陽性者を受け入れているとみられるためだ。多くの中小病院には感染症の専門医や感染対策の専門家がおらず、感染を防ぐハード面も整っていない。日本医師会の中川俊男会長は「民間病院は『コロナ以外』の人への医療を精力的に担っている」と指摘する。対応力の低い病院に陽性者の受け入れを強制すれば、大規模クラスターの発生源になりかねない。

自民、立憲両党の修正合意には医療関係者からも評価する声が上がる一方で「国は無策の自身を棚に上げ、国民を法律で縛ろうとしている」との指摘も残る。入院患者の調整に追われる東京都内の保健所職員はポツリと漏らした。

「過料とはいえ、入院拒否で罰則なんて診察を避ける人が増えるだけ。我々の事務も増え、医療現場を混乱させる」

(吉田啓志・『毎日新聞』編集委員、2021年2月5日号)

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