28年前のわいせつ行為で札幌市教諭が懲戒免職に
市教委は謝罪
芳垣文子|2021年3月1日3:22PM
28年前の元教え子の生徒へのわいせつ行為に対し、札幌市教育委員会が1月28日、市立中学校の50代男性教諭を懲戒免職とした。
被害を訴えていたのは東京在住の写真家石田郁子さん(43歳)。札幌市で過ごした中学生から大学生までの間、教諭からキスをされたり体を触られたりするなどの性暴力を受けたと訴えていた。
石田さんが最初に市教委に相談したのは2001年。しかし市教委はわいせつ事案として取り扱わず、当時の記録はない。その後、石田さんは自分の受けた行為が性暴力だったと気付き、16年に市教委へ教諭の処分を申し立てた。市教委は教諭に聞き取り調査を行なったが否定され、処分しなかった。
同年、石田さんは心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症。19年に市と教諭に損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。一審では棄却されたが、昨年12月、二審の東京高裁判決で事態が動いた。損害賠償請求は棄却されたが、中学3年から高校2年までわいせつ行為があった事実が認定された。
判決は今年1月5日に確定し、市教委は再調査を実施。教諭は否定したが、市教委は高裁の事実認定を覆すものではないと判断し、処分を決めた。市教委は会見で「任用期間の間は時効はない。司法判断を重く受け止めた」と説明。石田さんに謝罪した。一方、教諭側は高裁判決に「事実誤認がある」などとし、処分が不当だとする意見書を市教委に出した。
石田さんは提訴以降、実名を明かして被害を訴え続けてきた。懲戒処分について「よかったと思う。市教委は再発防止をきちんと考えてほしい」としながらも疑問を投げかける。「高裁の事実認定は、私が訴えてきたことを基にした判断。市教委は私の訴えでは事実を認めなかったのに、高裁の判断という『お墨付き』ですぐ処分を決めた。これで本当に責任を果たしたと言えるのだろうか」。
(芳垣文子・『朝日新聞』記者、2021年2月5日号)