浦添市長選、「オール沖縄」支援の新人・伊礼氏敗れる
渡瀬夏彦|2021年3月2日4:05PM
2月7日投開票の沖縄県浦添市長選挙は、自民・公明推薦の松本哲治候補(現職)が3万3278票、いわゆる「オール沖縄」勢力が支援した伊礼悠記氏(新人)が2万2503票という結果に終わった。松本氏が大差で3選を果たした。菅義偉首相は浦添市に自らの秘書と自民党本部職員を送り込み露骨なまでのテコ入れをした。
最大の争点は、「那覇軍港返還に名を借りた浦添新軍港建設の是非」のはずだが、実際どれだけ多くの市民に伝わったかは、別問題である。残念ながらメディアの多くも「米軍基地の県内たらい回し策・基地機能強化策」でしかない「SACO(日米特別行動委員会)合意」の弊害、その一つとしての「浦添軍港現行計画」や、埋立開発計画そのものを根本から問い、検証するまでには至らなかった。
辺野古新基地強行建設同様、浦添新軍港計画を推進しようとする「総責任者」は、安倍政権内の官房長官時代に約6年も沖縄基地負担軽減担当大臣(=実質は沖縄に犠牲を強いる施策の責任者)を兼務してきた菅首相である。松本市長の首根っこを押さえて公約を撤回させ、官邸主導の「沖縄基地政策」に従わせることで、足並みの乱れたままの「オール沖縄」に決定的な「分断のクサビ」を打ち込む。それが、この選挙での官邸や自民党本部の最大の狙いだったと筆者は思う。
だから、この問題をタブー視してきた「オール沖縄」側は、今後この課題に真正面から取り組み直す必要がある。その課題を鮮明に可視化してくれた伊礼悠記氏には、心から敬意を表したい。
伊礼氏は一夜明けて、短期決戦の中で日に日に市民の反応が良くなる実感を得て一層勝ちたいとの思いが募ったこと、「多くの市民が自発的に動いてくれた素晴らしい選挙戦」と思えたことも筆者に伝えてくれた。再出発の時である。
(渡瀬夏彦・ノンフィクションライター、2021年2月12日号)