東海第二原発再稼働への資金支援差止め訴訟で判決
「東電に損害生じず」と断定
小石勝朗|2021年3月5日6:46PM
東海第二原発(茨城県)の再稼働へ向け、東京電力ホールディングス(HD)が同原発を運営する日本原子力発電への資金支援を決めたことをめぐり、東電株主2人が小早川智明社長ら経営陣に支援差止めなどを求めた訴訟で、東京地裁(江原健志裁判長)は1月28日、請求棄却の判決を言い渡した。
東電HDは2019年10月の取締役会で、受給する電力料金の前払いの形で原電を支援すると決めた。安全対策工事費3500億円のうち2200億円とされる。
株主側は、東海第二の再稼働の見通しは立たず「支援金額の回収は極めて困難」と主張。福島原発事故の巨額の賠償を抱え体力のない東電が他社を支援すれば「回復できない損害が生じる」と立論した。一方、東電側は「資金的協力には経済合理性が認められる」と強調。再稼働に「具体的な懸念は生じていない」と反論していた。
判決は、東電HDが19年の取締役会で受給電力料金の前払いの時期や金額の判断を子会社の東京電力エナジーパートナー(EP)に一任したことと、東電HDが口頭弁論で「これ以外の資金的協力の予定はない」と明言したことを重視。HD経営陣が新たな経済的支援をする可能性を否定した。
また、東電EPの社長はHDの取締役を兼ねており、資金支援を決めた事情を知っていたとして、東電HDがEPにさらなる指示や命令を出す可能性も否定。株主側が差止め対象にした行為は予定されていないと結論づけた。
さらに「付言」として「全証拠によっても(東電に)回復できない損害が生じるおそれがあると認めることは困難」と断定した。
弁護団の河合弘之弁護士らは記者会見で「東電は国から多額の資金を受ける公的企業。巨額の前払いは市民感覚とずれている」と判決を非難。東電HDの経営陣に資金支援の損害賠償を求めて株主代表訴訟を起こす方針を示した。
(小石勝朗・ジャーナリスト、2021年2月19日号)