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東京五輪開催に美術運動で抵抗 
「五輪終息宣言展」が示すものとは

アライ=ヒロユキ|2021年3月5日6:58PM

【展示の共通性はトークで提示】

一般に政治メッセージを掲げる自由参加の展覧会は「お題」に合わせた予定調和的な内容になりがちだ。今回の美術展は昨年7月に続く2回目だが、前回と同様、企画者から出品者への事前注文がないことが特徴だ。「展示は無審査で行ない、作品の内容は問わないことを基本的な考えとしました」と戸山氏は語る。代わりに参加メンバーたちは芸術や政治の座談会を頻繁に行なった。そこで意識の擦り合わせがなされ、展示物の共通性が生まれた。前回の展覧会における、復興五輪の欺瞞を突くという時事的な問題意識が、今回は国家主義の破滅的な祝祭に対する俯瞰的な批判、持続可能性と生存を訴える抵抗姿勢へ昇華された。

フクシマにエコサイド(地球環境の壊滅的破壊)を重ねた三木祥子、生と腐敗のボックスアートの山崎春美、都市環境と自然を対比させ問う阿部尊美、生の讃歌の抽象画の森田直子ら各氏が出展したのもそうした作品だ。独立独歩の自由を自給自足的な小屋であらわした花田伸、不可視の国家制度を絵画的トリックであばく飯沼知寿子の両氏の作品も注目したい。

前記のトーク内容は計44ページの無料小冊子にまとめられた。そこでは美術界や日本社会の政治的無関心、パラリンピックに潜む差別性、作家の検閲体験、福島を取り巻く文化状況の落とし穴などが語られる。バラバラだった作家集団が政治状況を語り合う中で意識を高め合い、作品に反映させていく。民主主義に本来あるべき自治と議論が芸術展の形式で根づく、美術史においても貴重な営みだ。

美術界は前回同様、今回の展覧会も無視するだろうか? あいちトリエンナーレ2019「表現の不自由展・その後」の実行委員として、美術界から無視を蒙った筆者からの問いかけだ。

(アライ=ヒロユキ 美術・文化社会批評、2021年2月19日号)

 

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