2月13日深夜の福島沖地震を現地報告
脳裏に蘇る原発事故の悪夢
鈴木博喜|2021年3月5日7:21PM
「あれから10年の年にこんなに大きな地震が起きるとは……。原発は無事なの? もうやめた方が良い。無理なんだよ。オリンピックも原発もやめなさいって神様が言っているんだ」
福島市の男性は早口にまくしたてた。誰もが「あの日」を思い出した。そして思った。「大地震のたびに原発の心配をするなんて、もうまっぴら御免だ」と。紙一重の差で大津波が発生しなかった事だけが不幸中の幸いだった。
福島駅近くのビジネスホテル。13日深夜、下からどんと突き上げるような強い揺れに叩き起こされた。ベッドの下で激しく鳴り響くスマホを手に取る事も出来ず、上下左右に大きく揺れる部屋でおろおろとするばかり。身体の震えはいつまでも止まらなかった。電話で知人の無事を確認し、カメラを手に部屋を飛び出した。福島駅東口は水浸し、2階で作動したスプリンクラーの水が天井から降り注いだ。駅はすぐに閉鎖された。旧中合デパートの前では、落ちた外壁やガラスが砕け散っていた。
駅から少し離れた神社では石灯籠の上部が崩落。停まっていた車を直撃した。ブロック塀も複数個所で倒壊。福島市内も一部地域で断水し、市内のコンビニやスーパーではミネラルウォーターが売り切れた。浜通りの常磐道では大規模な土砂崩れが発生。相馬~新地の両インターチェンジ間の上下線が通行止めとなった。
福島県災害対策課のまとめ(16日04時41分現在)では、足の骨を折るなどの重傷者は5人、散乱したガラスを踏んだり家具が倒れたりした軽傷者は80人。新地町では強いストレスでパニックになった60代女性も確認されている。全半壊に至った住宅は確認されていないが、屋根瓦が崩れたり壁にひびが入ったりした「一部破損」は1418棟に上っている。東北新幹線の全線再開は23日ごろまでかかるとされ、常磐線・夜ノ森駅でも改札の天井が壊れた。楢葉町内の工業団地では苛性ソーダのタンクが壊れ、一部が敷地外に流出した。