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新型コロナワクチン接種開始も課題山積 
政権浮揚「起爆剤」の危うさ

吉田啓志|2021年3月12日1:39PM

一部の医療従事者を対象に新型コロナウイルスワクチンの接種が国内でも始まった。ただ、ワクチンを巡っては世界各国が争奪戦を繰り広げており、調達の見通しは不透明なまま。当初「3月末から」としていた65歳以上への接種は「4月1日以降」とあいまいな表現に後退。自治体を混乱させている。菅義偉首相はワクチンを政権浮揚の起爆剤にする意向だが、供給遅れや重篤な副反応が生じれば政権を吹き飛ばす爆弾とも化す。

2月17日朝。東京・目黒区の東京医療センターなどで国内初のワクチン接種が始まった。先行対象者は国立病院機構など100病院の医師、看護師ら約4万人で、同センターの新木一弘院長は「第1号」となった。

使用されたのは14日に承認された米製薬大手ファイザー社製ワクチンだ。3週間を空けて2回打つ。人工的なウイルスの遺伝情報を注射して免疫を機能させる新たなタイプで、海外での臨床試験では95%の有効性があったとされる。

ただし量産は難しく、各国は自国分の確保に躍起。日本政府とファイザー社の間の「6月までに1億2000万回分(6000万人分)を提供」という基本合意は、年明けの正式契約の段階で「年内に1億4400万回分(7200万人分)」へと変わった。EU(欧州連合)は域内で生産されたワクチンの輸出規制に踏み切り、生産拠点を欧州に置くファイザーも飛行機1便ごとに承認を得て日本に運ぶ。3便目以降は時期、量とも明確になっていない。

政府は英アストラゼネカとも1億2000万回分の提供を受けることで合意し、3000万回分は3月に間に合わせるという。ただし日本での承認申請は2月5日。ファイザー社製は申請から承認までに約2カ月要した。3月中の供給実現に向けては綱渡りが続く。5000万回分の提供を請け負う米モデルナに至っては日本での治験を1月に始めたばかりだ。

今回、日本では16歳以上に接種の努力義務を課した。17日からの先行接種終了後、3月中旬から感染者に接する医療従事者らに移り、4月1日以降に65歳以上の高齢者(約3600万人)や基礎疾患のある人(約820万人)、夏以降に一般の人という順を政府は想定している。「現時点で月々の供給量は不明」(厚生労働省幹部)なうえ、日本で普及している注射器ではファイザー社製のワクチン1瓶(6回分)で5回分しか採れないことも土壇場で判明した。いつ大半の人への接種が終わるのか、誰もわからない状況が続く。

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