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新型コロナワクチン接種開始も課題山積 
政権浮揚「起爆剤」の危うさ

吉田啓志|2021年3月12日1:39PM

【マイナンバー管理への不安も】

厚労省によると接種会場にメドがついた自治体は全体の5割で、注射を打つ医師らの確保ができたのは2割止まり。神奈川県南部の市の担当課長は「入荷時期も量も不明では予定の立てようがない」。16日の記者会見で河野太郎担当相は「日程がお伝えできないことをもどかしく思っている。ご迷惑をかけている部分は率直におわびしないといけない」と陳謝した。

「ワクチンで局面は変わる」

周囲にこう漏らす首相には、後手に回ったコロナ対応の失点を挽回し、夏の東京五輪・パラリンピックの成功に結びつける思惑がうかがえる。が、ワクチンには調達以外にも落とし穴が少なくない。

ファイザー社製の場合、国内の臨床試験では倦怠感や頭痛といった軽度の副反応が多くみられた半面、重度の副反応は確認されていない。とはいえ北欧の高齢者施設では因果関係は不明ながら施設の利用者が死亡する例も続いた。厚労省の専門部会では「接種の有益性が危険性を上回るのか、個別の判断が必要」との指摘もあった。

接種記録には、河野氏らの主導でマイナンバーによる一元管理が導入される。紙台帳での管理も併用するつもりでいた厚労省はかやの外。寝耳に水の同省内では、混乱を不安視する声が漏れる。

「全責任は内閣総理大臣たる自分にあるという思いの中で取り組んできた」。17日の衆院予算委員会で覚悟を問われ、菅首相はこう大見えを切った。接種計画の破綻は即、自らに跳ね返ってくる。

(吉田啓志・『毎日新聞』編集委員、2021年2月26日号)

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