「慰安婦」記事裁判、東京訴訟も植村隆氏の敗訴確定
岩崎貞明|2021年3月29日12:50PM
元「慰安婦」証言記事は「捏造」ではない――元『朝日新聞』記者の植村隆氏(『週刊金曜日』発行人)が文藝春秋社と研究者の西岡力氏らを名誉毀損で訴えた裁判は、東京地裁提訴から6年を経て、最高裁に退けられた。内容に立ち入らず上告を退けたものだった。
3月11日付で送付された最高裁決定を受けて、原告の植村氏と弁護団、支援者らは12日午後、東京・霞が関の司法記者クラブで緊急の記者会見を行なった。
地裁・高裁判決では、西岡氏が「捏造」と断じた三つの根拠のうち一つは「真実性」を認めたが、義母の裁判を有利にするために事実と異なる記事を書いた点などについては「真実と認めるのは困難」と認定。ただ、真実と信じても仕方がなかったという「真実相当性」を認めて免責していた。
弁護団の穂積剛弁護士は「真実相当性を認めるためには『確実な資料、根拠に照らして』という厳しい条件があったが、今回の最高裁は自らその原則を見過ごした。不当、不適切きわまりない、異常な判決」と強く批判。神原元弁護士は、西岡氏らの指摘を東京高裁が「事実と認められない」と判断したことについて「歴史修正主義的な言説は真実に反するという認定を司法で勝ち取った」と裁判闘争の成果を強調した。
植村氏は「本人が証言していないことを書かなかったことが、なぜ『捏造』と言われるのか」と首を捻りながら〈今回の裁判結果にひるむことなく、故金学順さんら戦時の性暴力被害者たちの名誉や尊厳を守るため、「アベ友」らによるフェイク情報の追及を続けていきたい〉との声明を読み上げた。
記者会見には支援団体の日本ジャーナリスト会議・須貝道雄事務局長と、メディア総合研究所事務局長の岩崎(筆者)も同席し、植村氏の裁判が日本のメディア・ジャーナリズム上の重要な問題であることを訴えた。
(岩崎貞明・メディア総合研究所、2021年3月19日号)