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被災当事者不在の「復興五輪」 
“虚飾リレー”に福島県浪江町は冷淡

鈴木博喜|2021年4月9日6:47PM

聖火リレー出発地・浪江小学校では少なくとも3月12日まで設置されていた解体番号の看板。リレー当日までにこの看板は撤去された。(撮影/鈴木博喜)

「聖火リレー」の名のもと3月25日から3日間、福島県内で行なわれたイベントは、「復興五輪」を謳いながら被災当事者不在で、被災地の現実を「華やかな演出」で覆い隠すことすらできなかった。筆者が取材した浪江町では内堀雅雄福島県知事の「五輪や聖火リレーで福島の光と影を国内外に発信する」との言葉とも異なり、リレーが去った後は虚無感が漂っていた。

初日の10番目、町立浪江小学校から「道の駅なみえ」までのわずか800メートルを3人のランナーが走った。同町では2017年3月末に帰還困難区域以外の避難指示が解除されたが、町なかで生活者の息遣いを感じるまでには至っていない。震災・原発事故前は2万人以上が暮らしていたが、今は復興事業の作業員や移住者を含めても町内の住民は1600人ほど。マイカーよりも、汚染土壌を中間貯蔵施設へ運ぶダンプカーが目立つ。

役場周辺ばかり整備が進むが、更地も増えた。リレーコースを少し離れれば、不動産業者の看板が立てられた土地があちこちにある。五つの町立学校は閉校が決まり、環境省による校舎解体が始まった。そんな浪江の現実とは一切かけ離れた、「光」ばかりを演出したイベントに町民の関心が高まらないのも無理はない。しかもスタート地点の浪江小学校では解体番号の書かれた看板が取り外されていた。「影」は封印されたのだ。

「ただの“良いとこ取り”だよね」

浪江町から中通りに避難している女性は、それだけ口にして後は苦笑するばかりだった。避難元の自宅はもはやない。環境省の公費解体で泣く泣く解体して、更地になっている。震災・原発事故後にきれいに整備された区間だけを発信されたところで、自身の10年間など伝わるはずがない。何から何まで当事者不在だった。

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