被災当事者不在の「復興五輪」
“虚飾リレー”に福島県浪江町は冷淡
鈴木博喜|2021年4月9日6:47PM
【コカ・コーラ記念タオルは1年前の日付だった】
郡山市では中学校で、福島市では陸上自衛隊駐屯地で新型コロナウイルスによるクラスターが発生。「リレーより感染症対策を」との声が高まったが、それでも強行された。相馬市の立谷秀清市長(全国市長会会長)に至っては2日目のリレー出発式で「放射能によって病気になった福島県民はおりません」との暴言を吐いた。
低線量被曝の健康への影響については専門家の間でも意見が分かれる。空間線量率が下がっても、砂などに含まれるセシウム含有不溶性放射性微粒子を吸い込むことによる健康リスクを指摘する専門家もいる。無用な被曝を強いられた側は健康被害が生じても原発事故の影響だとの立証は困難だ。内科医でもある立谷市長が出発式で被曝の健康影響を全否定してしまうあたりに、このイベントに課せられた真の役割が透けて見える。
なお、この立谷市長の発言場面は現場で取材していた『朝日新聞』の三浦英之記者がツイッターに動画でアップ。再生数は3月29日時点で約27万回に上っている。
「道の駅なみえ」では後片付けが始まってからも、スポンサーのコカ・コーラ関係者が記念のタオルを配っていた。スタッフの手にはまだ多くのタオルが残っていた。
事前取材では双葉郡各町村役場の担当者は「感染症の問題があるので静かに粛々と走っていただく」と口を揃えていたが、蓋を開けてみたらスポンサーの車がランナーより目立ち、沿道では“応援グッズ”を手渡しで配った。ちなみにタオルに印刷された聖火リレーの日程は昨年のままで使い回し。これが「復興」に名を借りた“虚飾リレー”の素顔だった。
(鈴木博喜・『民の声新聞』発行人、2021年4月2日号)