コロナ禍での「卒業式総括集会」
異様な「国歌斉唱」の実態
永尾俊彦|2021年4月16日5:28PM
【都教委の独善ぶりを批判】
集会では同日、処分取り消しを求め、15人の現元教員が東京「君が代」裁判5次訴訟を提訴したことも報告され、原告が紹介された。また、都立特別支援学校元教員の根津公子さんも報告した。根津さんは2009年3月の卒業式での「君が代」斉唱時の不起立により停職6カ月の処分を受けたが、その取り消しと損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決(東京高裁・20年3月)は一審判決(東京地裁・18年5月)を変更。根津さんが「逆転勝訴」し、今年2月に最高裁も高裁判決を維持する決定をした(本誌3月5日号)。「最高裁の現状を見ると高裁判決が維持されることはありえないと思っていましたが、維持されました」と根津さんが述べると拍手がわいた。
高裁判決は停職6カ月の処分について「より重い処分は免職のみ」とし、「被処分者への心理的圧迫の程度は強い」としている。根津さんに「心理的圧迫」を感じさせたことを都教委はどう捉えているのか。藤田裕司教育長は筆者の質問状に「本件高裁判決では、都教委の控訴人らに対する処分に関して、『処分の量定に際して職務上通常尽くすべき注意義務を尽くさず、本件各処分を行ったとまでは認めることはできない』と言及しています」とメールで回答した。根津さんにこの回答を伝えると「処分量定の部分の判示は損害賠償請求についてであり、停職6カ月処分の心理的圧迫の強さについてではありません。藤田教育長は判決文を読んでも理解できない? それとも、いいとこどりの読み方?」と語っていた。都教委の独善ぶりがよく分かる。
(永尾俊彦・ルポライター、2021年4月9日号)