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「ラムザイヤー論文騒動」の背景にある白人至上主義

小山 エミ|2021年4月22日4:34PM

ラムザイヤー氏はさらにこの論文で、こうした議論は被差別部落・在日コリアン・沖縄といった日本における特定のケースだけに当てはまるものではなく、米国の人種的マイノリティを含めたさまざまな「下層階級」に広く通用する「一般的」な理論だと主張している。しかし同時に、こうした「一般的な」理論を米国における具体的な人種問題に適用しないともし、その理由をこう説明する。

「わたしは米国における人種対立など著名な事例を意図的に、しかし不本意ながら、避けることにしている。それは、学界の激しい分極化により、人種問題についての議論が著しく困難になっているからだ。あまりよく知られていない事例についてであれば、おそらくより自由な議論が可能なのではないだろうか」

また別の場所でもかれは「米国の学界の激しい分極化」という理由を繰り返し述べている。

そのような分極化の例として、かれは米国ではよく知られた通称「モイニハン報告」の事例を挙げている。これは公民権法が成立した翌年の1965年にのちに上院議員となったダニエル・パトリック・モイニハン氏が当時のジョンソン政権の高官として作成した報告書で、黒人たちの貧困の原因を現代の差別ではなく黒人家庭の構造に求め、福祉制度の拡大が黒人家庭の崩壊を助長している、とした。

この報告は黒人差別の存在を否定し福祉削減を主張する立場の論者によって広く支持されたが、いっぽう反差別や福祉拡充を主張する側からは「犠牲者非難」の論理だとして激しく批判された。

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