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「ラムザイヤー論文騒動」の背景にある白人至上主義

小山 エミ|2021年4月22日4:34PM

「ジャパンフォワード」に多数の寄稿をし、紹介ページのあるアール・キンモンス氏。(「ジャパンフォワード」ウェブサイトより)

桜井誠氏らとの共犯関係

ラムザイヤー氏は、在日コリアンについて書いた論文では「在日特権を許さない市民の会」設立者の桜井誠氏の著書を、沖縄についての論文では「(沖縄)県民にエサを与えないでください」と沖縄の人たちを動物扱いしている惠隆之介・渡邉哲也両氏の本を、そして部落問題についての論文では差別的な内容の文書だけでなく部落の地名や所在地などを記載して部落差別解消推進法違反として裁判になっているものまで引用している。

もしかれが桜井氏に相当する米国のネオナチや極右の文献を引用したら、査読(学会誌による事前の論文評価や検証)にはまず通らないし、世間から厳しく批判されるはずだ。ところが日本のマイノリティを題材とすることで、そうした非難を回避しつつ、同様の効果がある「一般的な」理論を提唱できてしまう。

そして、ラムザイヤー氏やかれと多数の論文を共著している米インディアナ大学のエリック・ラスムセン氏(「差別的な行為」を行なったとして現在大学からの調査を受けており、無給で停職中)、「慰安婦」問題などに関する欧米メディアの日本報道の根底に左派エリートによる偏見があると叩く大正大学名誉教授のアール・キンモンス氏、日本の右派と親和性の高い言論や著書を発出し続ける麗澤大学准教授のジェイソン・モーガン氏ら右派白人男性日本研究者たちは、これらの主張を通して日本の右派と共犯関係を結んでいる。

右派はかれらに学術的論文のソースとして引用されることで正統性を獲得し、また『産経新聞』が「慰安婦」論文を紹介する際そうしたように、そして産経新聞社の英語サイト「ジャパンフォワード」がラムザイヤー、キンモンス、モーガン各氏を重用するように、「中立的な外部の専門家がこう言っている」と自らの政治的立場の正当化に利用している。

たとえば桜井氏は自らが設立した日本第一党の公式動画チャンネルで自著がラムザイヤー氏に引用されたことを紹介しつつ「ハーバード桜井」を名乗り、部落差別解消推進法違反で裁判に訴えられた人物がその裁判で発表した資料もラムザイヤー氏によって学術的価値が認められたと主張した。また「新しい歴史教科書をつくる会」もラムザイヤー氏を根拠として、公式チャンネルに「韓国女子が憧れる職業が慰安婦に!」という動画を掲載した。

お金や勲章を目的とした日本政府や右派との癒着というゴシップ的な見方を採用することは、米国の白人至上主義的な「日本研究者」による日本の右派との共犯関係という本当に深刻な問題から目を逸らせてしまうのではないだろうか。

(こやま えみ・脱植民地化を目指す日米フェミニストネットワーク[FeND]共同創設者。2021年4月9日号)

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