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富裕層の資産保有に「上限」を

高橋伸彰|2021年5月1日3:46PM

野村総合研究所の調査によれば、純金融資産を保有する日本の5402万世帯の資産総額は2019年で1554兆円、このうち上位0.16%の超富裕層(世帯当たり5億円以上)8.7万世帯が保有する資産は97兆円。

これに対し8割近くを占める圧倒的多数のマス層(同3000万円未満)4215.7万世帯が保有する資産は同656兆円だが、世帯当たり平均で比較すると前者が11億1149万円、後者が1556万円と両者の格差は72倍にも及ぶ。

所得格差についても、上場企業トップ500社を対象にした東洋経済新報社の調査によれば、従業員の平均給与と役員の平均報酬の格差が10倍以上の企業数は2017年の105社から20年には158社に、また役員の平均報酬が1億円以上の企業数も同期間で42社から73社に、いずれも3年間で5割以上増加している。

こうした格差が、新自由主義者の唱えるトリクルダウンで縮小しないことは歴史的にも証明済みだ。過去3世紀にわたり先進諸国の所得と資産のデータを分析し、格差拡大の実態を解明したフランスの経済学者トマ・ピケティも、資本主義を放置しておくかぎり格差は「拡大する方向へ向かう」(『21世紀の資本』)と指摘する。

世界銀行の副総裁も務めた経済学者のスティグリッツは、格差を縮小するには政府の積極的な再分配政策が必要だと説く。具体的にどう進めればよいのか。世界的な貧困や、食糧・環境危機などの問題を告発してきたスーザン・ジョージは、「なぜ1%にも満たない富裕層が世界を支配するのか」と副題の付いた著書(『これは誰の危機か、未来は誰のものか』)で、まずは富裕層がどれだけの所得を稼ぎ、どれほどの資産を保有することが社会的に許容されるのか、社会として「上限」を定めることが先決だと言う。

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