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日銀は「金融緩和中毒」なのか
高橋伸彰|2021年5月5日12:23PM
黒田東彦(くろだ・はるひこ)日本銀行総裁が「異次元の金融緩和」と称し、マネタリーベース(市場に供給する資金量)を2年で2倍にし、2%の物価上昇を達成すると宣言したのは2013年4月である。それから8年、マネタリーベースこそ当時と比較して、この2月には4倍以上に増えたが、2%の物価上昇は未だに達成されていない。
消費者物価指数(生鮮食品・エネルギーを除く)の推移を見ても、13年から20年までの上昇率は消費増税の影響を含めても年平均0.8%に過ぎず、最近5年間では同0.4%に止まっている。
それでも、日銀はこの3月19日に公表した「より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検」(以下、点検と略す)で、日銀の「量的・質的金融緩和」には消費者物価を前年比0.6~0.7%程度押し上げる効果があったと言う。
それでは、なぜ2%の目標をいまだに達成できないのか。日銀は2016年9月の「総括的検証」で、日本は将来の物価予想に関し米国などの諸外国と比較して、足元や過去の物価上昇から受ける影響(適合的期待形成)のほうが、中央銀行の政策や物価目標から受ける影響(フォワード・ルッキングな期待形成)よりも大きいからだと説いた。その本音を探れば、目標を達成できない原因は諸外国と異なる日本の期待形成にあり、日銀の金融緩和は有効だという強弁に他ならない。