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厚労省、病床確保計画見直しも新型コロナ患者数急増で対応追いつかず

吉田啓志|2021年5月18日6:16PM

【長年のコスト削減のツケ】

日本の医療の大きな課題は、コロナ以前から医療機関同士の役割分担や再編だった。コロナ禍を受け、厚労省は他の病院に医療従事者を派遣した医療機関への財政支援をにわかに始めた。だが、焼け石に水。ならばと3月24日には、5月中に新たな病床確保計画を策定するよう都道府県へ通知した。各都道府県は昨夏に病床確保計画を策定したものの、第3波の襲来時に「病床確保が追いつかなかった」(田村憲久厚労相)ためだ。

通知では大学病院に重症者を、公立病院に中等症患者を受け入れてもらうなどの割り振りをし、個別の病院ごとに受け入れ可能な病床数を把握することを求めた。さらに、「緊急時」に備えた計画も別途4月中に練るよう指示。感染者が第3波ピーク時の2倍になった場合などには一般患者の入院を先送りし、コロナ向け病床を確保するよう迫っている。

とはいえ病院間の利害対立もあり連携はなかなか進まない。選挙をにらむ首長が地元病院の診療縮小を嫌う例もよくある。関西の2府4県(京都、大阪、滋賀、兵庫、奈良、和歌山)は病床逼迫時に患者を他府県で受け入れる取り決めをしているが、感染者急増の前に機能していない。大阪府内の中小病院長は「国は一般患者を断れと言うが、どんな疾患・症状を対象とするのかも示さない。こちらに丸投げされても無理だ」と憤る。

バブル崩壊後、医療費抑制を御旗として、人手とコストのかかる感染症病床は次々削減された。コロナ対応が可能な第2種感染症指定医療機関は全国でも351施設に過ぎない。長年のその場しのぎの医療政策のツケが、コロナ禍の下で一気に噴き出している。

(吉田啓志・『毎日新聞』記者、2021年4月30日・5月7日合併号)

 

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