憲法記念日に国会前で「憲法大行動」
「政権による“棄憲”を止めろ!」
薄井崇友|2021年5月28日12:44PM
菅義偉政権の下、憲法9条への自衛隊明記を含む4項目の憲法改正案を掲げた自民党は5月6日、憲法改正の国民投票で駅前などの商業施設に投票所を設けることなどを軸とした国民投票法改正案を衆院憲法審査会で採決。自民、公明、立憲民主各党などが賛成し可決した。共産党は反対した。
この3日前の5月3日(憲法記念日)、東京・永田町の国会前で行なわれた「2021平和といのちと人権を! 5・3憲法大行動」(同実行委員会主催)には多くの市民が参集。新型コロナウイルス感染対策のため歩道と公園に分散しながら、横断幕や幟などを掲げ抗議した。その時点で4都府県が緊急事態宣言下での改憲の動きに「それこそ不要不急だ」「憲法を守ろう!」との声が飛び交い、有識者も多数登壇して現行憲法の意義を強調した。
その一人、田中優子さん(江戸文化研究者・本誌編集委員)は、自民党の憲法草案が現行憲法とは「価値観・人間観・国家観がまったく異なる」と指摘。かつて安倍晋三前首相が憲法9条に自衛隊の存在を明記して違憲状態の解消を訴えたことにも触れ、今回の憲法草案では「自衛隊」ではなく「国防軍」と書かれている点も挙げながら「この憲法に置き換わった時、日本はまったく別の国になります」と訴えた。発言の最後では小説家の故・井上ひさしさんによる「現行憲法を変えるなら、それは改正ではなく棄憲、つまり憲法を捨てることだ。われわれには憲法を守るのか捨てるのか二つの選択肢しかない」との言葉も紹介した。
集会ではさらに雨宮処凛さん(作家・本誌編集委員)、山口二郎さん(法政大学教授)らも発言。4野党1会派も声を寄せた。主催者代表の菱山南帆子さんは、コロナ禍における菅政権の無策・失策を批判。「政治を変えよう。総選挙の前哨戦と言われた先の北海道(衆院2区補選)、長野(参院補選)、広島(参院再選挙)は野党統一候補がすべて勝利した。この勢いを加速させるためにも私たちは一つの塊となり、大転換の年にしよう!」と訴えて集会を締めくくった。
(薄井崇友・フォトジャーナリスト、2021年5月14日号)