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映画『狼をさがして』に右翼が的外れ抗議
横浜の映画館、告訴検討
伊田浩之|2021年5月31日1:28PM
【「『反日』の意味が反転」】
『狼をさがして』が取り上げたのは、1974年後半から75年前半にかけ国内11カ所で相次いだ企業爆破事件などを起こした「東アジア反日武装戦線」。日本の大企業によるアジアへの経済侵略を問題視し、同戦線「狼」部隊が起こした三菱重工本社の爆破事件では、通行人など8人が死亡、約360人が重軽傷を負った。天皇特別列車爆破も計画していた。映画は、元メンバーや家族、支援者などの証言をもとに、事件に迫っている。
上映中止を求める側は理由として(1)東アジア反日武装戦線の活動を容認、(2)同戦線の資金源になっている──を挙げているというが、前出の馬奈木弁護士は「まったく事実に反する。映画を観ていないのではないか」と指摘した。
小林社長は配給を決めた理由として「戦後の高度成長で抜け落ちた(侵略の)加害責任について先駆的に目覚めた人々が、(民衆への)加害者になってしまった。(メンバーらが)事件をどのように総括したかに関心がある。事件から約半世紀経ち、(自らの加害性を自覚し弱者に思いを寄せることを意味した)『反日』の意味が反転してしまった。近代天皇制など日本では向き合いづらい問題に韓国の人が取り組んだことをリスペクトしている」と語る。
映画に出演している支援者の太田昌国さんは「『Black Lives Matter』運動など奴隷制や植民地主義を問い直す理論的・社会的な動きが世界的にあるが、日本では、そのことにまったく感性を持たない人が政権を握っている。日本社会が捨て去ってきた課題であり、約半世紀前に主張された植民地主義の問題点をいま、どう考えるかに重要な意味がある。この映画は(緊張している)日韓の政治・社会関係に利用されないよう非常に慎重に作られており、落ち着いた冷静な作品だ」と話した。
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