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建設アスベスト集団訴訟、最高裁で原告勝訴も屋外労働は救済対象外

粟野仁雄|2021年5月31日2:33PM

5月17日、判決後に最高裁前で勝訴を報告する原告弁護団。(撮影/粟野仁雄)

アスベスト(石綿)を含む建材を扱い中皮腫や肺がんなどを発症したとして、作業員や遺族らが国や建材メーカーを相手に損害賠償を求めた4件の訴訟(神奈川、東京、京都、大阪)について5月17日、最高裁第一小法廷は、国と建材メーカーの責任を認める初めての判決を出した。

深山卓也裁判長は、1975年10月(石綿にかかわる特定化学物質等障害予防規則の改正)から2004年9月(石綿を含む建材などの使用・製造などを禁止した労働安全衛生法施行令の改正前月)までの間、国が防塵マスクを指導するなどの規制を怠ったと認定。個人で仕事を請け負う「一人親方」や未提訴の人も救済対象とした。石綿含有建材のメーカーにも「共同不法行為」として賠償を命じた。

4件の訴訟は個別には控訴審までに賠償が認められ、最高裁の統一見解が注目されていた。一家で大工仕事をし、夫の金雄さんと息子の誠さんを中皮腫で失った埼玉県の大坂春子さんは「みなさんの支援のおかげ」と感謝の弁を語った。しかし屋外労働については救済対象から外れた。大阪訴訟の原告で夫の晃三さんを肺がんで失った山本百合子さん(72歳)は逆転敗訴だった。「夫は積水ハウス製の瓦(スレート)を切断する仕事で粉を浴びて真っ白でした。アスベストに関係がないはずがない」と怒った。

与党のプロジェクトチームは被害者1人当たり最大1300万円の和解金を支払うことなどを提案、原告団は受け入れる方針だ。弁護団長の小野寺利孝弁護士は、「建設従事者の命を奪い続けてきた問題で、菅首相がどう対応するかに迫っていきたい」と話した。08年の集団提訴以来、すでに約7割の原告が死亡。首都圏訴訟の宮島和男さん(91歳)は、「13年は長すぎた。3年、5年でも早かったらもっと生きている人がいたのに」と悔しがった。菅首相は18日、原告団代表と面会し、謝罪した。

(粟野仁雄・ジャーナリスト、2021年5月21日号)

 

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