加計学園文書不開示裁判で原告敗訴の一審判決
「公文書は誰のもの」
片岡伸行|2021年6月7日8:37PM
「公文書は誰のものだ!」。傍聴席から怒りの声が上がった。2017年11月に文部科学大臣によって認可された加計学園(岡山理科大学)獣医学部開設に関わる行政文書不開示決定の取り消しを求めた裁判で、東京地裁の市原義孝裁判長は5月18日、原告の請求を退ける判決を言い渡した。
原告が開示請求したのは獣医学部校舎の設計図面と建設費見積もり、補助金請求時の加計学園理事会の議事録。これらが情報公開法5条で定める不開示情報に当たるかどうかが争点だった。原告側は国家戦略特区審議時の文科事務次官で、官邸側から圧力を受けたことで「行政が歪められた」と証言した前川喜平氏の仮想尋問を実施し「全面不開示はあり得ない」などとする証言記録を証拠提出した。しかし、判決では、図面を公開すれば「不審者の侵入」などのおそれがあり、議事録の開示は「一般的類型的な支障が生ずる」ので加計学園の権利や利益を害するとして全面不開示を容認した。
判決後に司法記者クラブで会見した原告代理人の海渡雄一弁護士は「一般的に議事録には不利益を被る記載が含まれるから開示しなくていいなどという理由にならない理由による不当な判決。これでは情報公開制度は意味をなさず、情報公開請求訴訟をやる意味もなくなる」と憤慨。原告の福田圭子さんは「当時の安倍(晋三)首相が『腹心の友』である加計学園理事長に便宜を図った疑惑や、愛媛県今治市からの100億円近い補助金と土地無償譲渡が妥当なものか。それらの解明のために文書は公開されるべきだと3年近く裁判を続けてきたが、まったくもって不当な判決。とくに校舎図面はネット上で公開されており、隠す理由はない」などと述べた。
公文書は「知る権利」に基づく「国民の共有財産」だが、「加計学園の利益」を優先した形の一審判決。原告側は5月24日、控訴することを決めた。
(片岡伸行・記者、2021年5月28日号)