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「LGBTは種の保存に背く」
相次ぐ自民党議員の差別発言の背景は
松岡宗嗣|2021年6月8日12:27PM
性的マイノリティに関する法案をめぐり、自民党参議院議員の山谷えり子氏が5月19日、「体は男だけど自分は女だから女子トイレに入れろとか、アメリカなんかでは女子陸上競技に参加してしまってダーッとメダルを取るとか、ばかげたことがいろいろ起きている」と発言。翌20日には同党衆議院議員の簗和生氏も「人間は生物学上、種の保存をしなければならず、LGBTはそれに背くもの」と語り、共に批判を集めている。
二つの差別発言は、自民党のLGBT特命委員会が提案している「LGBT理解増進法案」に関する党内の審査の中で起きた。山谷氏の発言はトランスジェンダーの実態を無視し、トランス嫌悪や偏見、排除を煽っている。簗氏の発言も、自身の差別意識や偏見を正当化するため、誤った認識で「生物学」という言葉を持ち出しマイノリティを排除しようとするまさに差別にあたるものだ。同党衆議院議員の杉田水脈氏が月刊誌『新潮45』(2018年8月号)に「LGBTは生産性がない」との旨を寄稿し、優生思想に基づく排除の言説に多くの批判が集まってから3年になるが、両氏はここから何も学んでいないのだろう。
まず、誰もが自身のジェンダーアイデンティティ、つまり性自認が尊重され、権利が守られるべきとの前提を押さえる必要がある。山谷氏が言うトイレ利用の実態では法律上の性別や身体的な状況にかかわらず、当事者の中にはすでに女性トイレを使っている人もいれば、見た目が周囲からどう認識されるかという恐れなどから使えずに困難を感じている人もいる。
競技に関しても日本スポーツ協会が20年に「体育・スポーツにおける多様な性のあり方ガイドライン」を発行。トランス女性の競技参加に関する競技連盟等の規定を紹介している。トイレ利用についての現場レベルの調整や、競技参加規定に議論はあるが、トランスジェンダーの実態や各議論を無視したトランス排除を扇動する発言は、当事者の命を脅かしかねない。