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東京五輪中止署名に42万人 
呼びかけ人・宇都宮健児氏に聞く

2021年6月11日4:46PM

【開催国に不利益な契約】
――『日経新聞』(5月28日付)は中止による日本の巨額な賠償責任について報じています。

開催都市契約書には違約金条項はありません。開催を中止できるかどうかは、IOC(国際オリンピック委員会)が決定権を持つということは明示されています。また、中止になったときにそれに伴う賠償が生じる可能性がありますが、IOCはいっさいの責任を負わないということも書いてあります。

一方で、こちら側、開催都市は、IOCに対する損害賠償請求を放棄すると書かれている。だから開催都市側に賠償金が発生する可能性はあるのです。

保険でカバーできるところもありますが、これは開催国にあまりにも不利益な契約です。

しかし今回は、平時での一方的な開催都市側の不履行ではなく、コロナ禍中であります。

――先日、国連のアントニオ・グテーレス事務総長が、いまはコロナと『戦争状態』にあると発言しましたね。

そうです。新型コロナウイルスというのは、ある意味では戦争に匹敵するような、世界的な大災害なのです。

1940年の東京五輪は日中戦争、第二次世界大戦が勃発したため、日本は開催を返上したのですが、当時損害賠償などの問題にはなりませんでした。

こういう状況下でIOCが日本に損害賠償をするようなことがあれば、今後五輪に立候補する都市はなくなるでしょう。それはIOCの自滅行為です。

【強行開催の政治的思惑】
――賠償金がネックではないのなら、なぜ日本側は開催中止に舵を切らないのでしょうか?

菅義偉政権は後手に回るコロナ対策の評判が悪く、支持率が急落しています。そのためになんとか五輪開催で挽回したい。

国民の目を五輪に釘付けにして政権浮揚をはかり、解散総選挙に臨みたい。五輪開催強行は、いわゆる政治的思惑ですね。

そのために政府はIOCの言いなりになっているのです。その姿勢がIOCの傲慢さを助長させています。

――トーマス・バッハIOC会長は競技団体の会合で「われわれは犠牲を払わなければならない」と発言しました。

彼らは非常に上から目線で高飛車です。IOCは日本人の犠牲ではないと弁明しましたが、実際五輪開催により、前述のように多くの日本市民が犠牲を払っているのは確かなのです。また強行開催することでボランティアの強制や観客の動員などで新たな犠牲を生むこともあります。コロナ禍で五輪の負の側面が浮き彫りになりました。

命を優先するのか、五輪という商業イベントを優先するのか。五輪をひらく意義とは何なのかという本質的なことが、今私たちに問われています。

――署名は6月1日現在41万筆超でまだまだ伸びております。

35万筆を超えた段階で要望書を東京都やIOCに提出しましたが、これは最初の要請行動です。50万筆集まった段階で、次の行動を考えています。

(聞き手・まとめ/尹史承 2021年6月11日号)

編注:署名総数は6月11日現在、42万筆を突破した。

※6月11日(金)発売の『週刊金曜日』6月11日号では、宇都宮健児氏のインタビューのほか、中野晃一、鷲尾香一、井谷聡子の各氏が“犠牲の祭典”東京五輪を質す。

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