「DHC包囲網」広がる 本社前で抗議行動・企業による関係見直しも
岩本太郎|2021年6月18日7:52PM
化粧品会社DHCの吉田嘉明会長による一連の差別発言に対して6月3日、市民有志が同社への直接的な抗議行動に打って出た。
東京・南麻布のDHC本社ビル前に市民ら約110人(主催者側発表)が集結。コロナ禍とあって声を上げない「サイレント抗議」形式だったが、写真にある通りさまざまなメッセージを描いた横断幕やプラカードを掲げながら、午後6時半から約1時間にわたり本社ビルの正面玄関前を中心に同社に抗議した。ちなみに現場まで取材に来た報道関係者は本誌も含めて約20人。NHKやTBSなど放送局も駆けつけるなど、問題への世間の関心の高まりもうかがわせたが、DHC側は終始無反応。ガラス張りの1階ロビーから数人の男性が無表情に外の様子を見守るのみで、ビルから人の出入りはなかった。
吉田会長は昨年11月、サプリメント販売での競合相手であるサントリーについて「ネットではチョントリーと揶揄されている」などの差別発言を公式サイトに掲載したほか、4月にこの件を報じたNHKに対しても「NHKは日本の敵です」と同じく公式サイトで宣言。こうした経営トップ自らによる公式の場での暴言を、企業や自治体も問題視した。5月初旬以降、それまでDHCと結んでいた包括連携協定を解消する方針を表明する自治体が続いたほか、流通関係でもDHC商品の取り扱いを取りやめる動きが広がった。これに焦燥感を募らせたか、吉田会長による前記の一連の差別発言はDHC公式サイトからは5月末までに削除され、現在は見られなくなった。
6月2日には流通大手のイオン(千葉市)が、DHCより「非を認め、当該発言を撤回する」との回答が得られ、削除も確認できたとして、同社との取引を継続すると公表した。もっとも、これについて翌日の抗議行動に集まった参加者たちに聞いても「取引先を意識したポーズだろう」といった懐疑的な声がほとんど。事実、2日にネットメディア「DHCテレビ」で放送された『虎ノ門ニュース』では前記のNHK報道や、発言削除についての各メディアの報道を批判する発言を出演者が行なっていた。抗議現場には「差別文章消しただけで終わりとかありえないですよ」とのプラカードも。