石垣島ミサイル基地建設めぐり市民団体が沖縄防衛局の通知書に疑義
西村仁美|2021年6月21日6:49PM
沖縄県の石垣島では陸上自衛隊のミサイル基地建設工事が2019年から進行中だ。今年5月中旬には於茂登岳の麓にある予定地の一部で樹木の伐採が始まったが、この工事について沖縄防衛局が出した行為通知書に疑義があるとして「石垣島に軍事基地をつくらせない市民連絡会」が6月5日、石垣市内で記者会見を行なった。
工事前の現況調査が終わったとして防衛局が提出した行為通知書には、伐採樹木名や量などを伝える表の中に、常緑高木のサキシマスオウノキが「約284本」、アマミアラカシが「約8812本」とある。この通知を石垣市は4月13日に受理し、同23日に開催した同市景観形成審議会に諮ったうえで、5月14日には協議終了の通知を防衛局に出している。
だが、この内容に市民連絡会共同代表の嶺井善さん(55歳)は「サキシマスオウノキなど当該地で見たことがない」と疑義を唱える。基地建設前の19年3月に沖縄防衛局が出した現況調査報告書にも、当該地に前記の樹木2種の存在は記載されていない。
石垣市在住で島の植生に詳しい男性(72歳)も建設工事開始前に植生確認のため現地を歩いた時「サキシマスオウノキなど見なかった」と断言する。なお当該地から北東部にはンタナーラのサキシマスオウノキ群落があるが、ここは国指定の天然記念物だ。
仮に当該地にそうした樹木の群落があったとしたら、その伐採について景観形成審議会で話が通ったり、市の職員が誰も異議を唱えないことはあり得ないと嶺井さんは指摘。「今からでも環境アセスメントをやるべき」と訴えた。
この件について石垣市の都市建設課と教育委員会文化財課は筆者の取材に「対応を検討中」と、どちらも回答。沖縄防衛局報道室の担当者からは「事実関係を確認するのに時間を要する」として期限までに回答を得られなかった。
(西村仁美・ルポライター、2021年6月11日号)