沖縄県警が米軍抗議の蝶類研究者を家宅捜索
澤井正子|2021年6月22日4:21PM
「リュウキュウウラボシシジミ」は、シジミ蝶の一種で、日本で最小級の蝶。沖縄本島北部と西表島のみに生息する準絶滅危惧種。清流が流れる自然度が高い場所にしか生息できないこの蝶がたくさんいれば、その地の自然の貴重さが証明されるといわれている。
「私は沖縄のこのチョウチョたちを守りたいのです」と語る蝶類研究者の宮城秋乃さん(42歳)が6月4日、沖縄県警から家宅捜索を受けた。携帯電話、パソコン、カメラなどが押収され、自宅、倉庫、書類の写真が撮影された。4日間続いた取り調べでは道路交通法違反、威力業務妨害、廃棄物処理法違反の容疑と説明された。宮城さんのフィールド、やんばるの森(沖縄島北部)で発見した「米軍廃棄物」という「落とし物」を道路に並べ交通を妨害した、という。しかし庭に置いてあった肝心の「米軍廃棄物」の袋は、外側の写真を撮るだけで中を調べもしなかったという失笑家宅捜索だった。
沖縄の米軍北部訓練場の正式名称は「ジャングル戦闘訓練センター」である。亜熱帯気候の沖縄は高温多湿で、やんばるの森はまさにジャングル。1950年代から主に海兵隊が密林での対ゲリラ戦を想定した訓練をしてきた。2016年12月に約半分が日本に返還されたが、蝶を追って訓練場跡地に入った宮城さんの視野に映ったのは、軍事訓練の忘れ物、夥しい量の「米軍廃棄物」だった。
空薬莢、不発弾、使用済み煙幕手榴弾、使用済み発煙筒、パラシュート照明弾、弾薬箱、バッテリー類、衣類、土嚢、ゴムシート、ケミカルライト、毒性が高く現在使用が禁止されているPCB、農薬のDDT類、BHC類など汚染物質のドラム缶、野戦食袋、飲料水のビンや缶、放置された鉄杭・鉄板……他にも何に使用したのか分からない物など、膨大な量だ。これらが地上に散乱していたり、埋もれていたり地中に埋められていたりしながら、高温多湿の環境の中でみな腐食、散乱、崩壊しており、環境破壊・汚染は想像を絶する。訓練場跡地は、まさに米軍の「ゴミ箱」だった。
「自然界に本来存在しないモノが残っていて、生態系に悪影響を与えるかもしれない」との懸念から、宮城さんの研究対象は一時的に蝶から「米軍廃棄物」となってしまった(本人はもちろん早く蝶類研究者に戻りたいと願っています)。