機動隊の沖縄派遣住民訴訟で警視庁副総監が沖縄県警に“責任丸投げ”証言
西村仁美|2021年7月2日5:49PM
沖縄の米軍ヘリパッド建設工事の警備に警視庁が機動隊を派遣したのは違法だとする都民約180人が、派遣費用約2億8000万円を当時の警視総監2人に賠償させるよう都知事に求めた裁判の控訴審・第3回口頭弁論が6月16日、東京高裁(廣谷章雄裁判長)で開かれた。派遣決定当時の警視庁警備部長で、現副総監の緒方禎己氏が証人として出廷したが、「機動隊の具体的な行動は沖縄県警の指揮下にある」との責任回避の主張を繰り返した。
沖縄本島北部・東村高江の工事をめぐり2016年7月下旬から約5カ月間、警視庁機動隊が現地に派遣された。一審判決は警視総監への賠償請求の訴えは退けたものの、警察の行為の一部(工事資材搬入用の入口であるゲート前に、工事に反対する住民側が置いた車両やテントを機動隊などが強制撤去したこと)については違法性を認めていた。これを根拠に原告都民側は控訴審では「派遣の最初で最大の目標であったこの強制撤去が違法である以上、派遣そのものが違法」と主張している。
原告代理人の高木一彦弁護士は緒方氏に対し、派遣決定の責任や当該撤去を知り得た時期を追及。緒方氏は強制撤去の違法性には反論しなかったが、「派遣する警視庁は(現地での具体的な警察行動を)知る必要がない」と発言。当該撤去は報道で知ってはいるが、あくまで沖縄県公安委員会からの援助要請があってのものだ――などと繰り返した。
裁判官からは、計3回の派遣中2回目以降の前提として、当該撤去の警視総監への報告の有無についての質問があった。これに対して緒方氏は「自らは報告しておらず、部下が行ったかもしれない」と証言。傍聴参加者からは「本当に無責任。違法行為を全て沖縄県警の責任にしている」と憤る声が上がっていた。弁論終結となる次回は8月23日15時から同高裁101号法廷で開かれる。
(西村仁美・ルポライター、2021年6月25日号)