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伊藤詩織氏への中傷ツイート
東京地裁で賠償・削除命令
小川たまか|2021年7月16日7:55PM
ジャーナリストの伊藤詩織さんが、元東京大学大学院・特任准教授の大澤昇平氏が行なったツイートに対して110万円の損害賠償と投稿の削除を求めた民事裁判で、7月6日、東京地裁の藤澤裕介裁判長は大澤氏に33万円の支払いと投稿の削除を命じた。
大澤氏は2020年6月24日、「伊藤詩織って偽名じゃねーか!」という文章とともに、伊藤さんと同姓同名の女性が破産開始決定を受けたとする官報広告の画像を添付。さらに「#性行為強要」などのハッシュタグをつけていた。訴訟対象となったのはこの1件だが、訴状では大澤氏がこれ以前にも伊藤さんへの誹謗中傷を連投していたことが説明されていた。
大澤氏側は、官報広告が別人であることがすでにネット上で拡散・広く認識されていたことから伊藤さんの社会的評価は低下しないなどと主張していたが、判決ではこの主張は否定された。
判決後の記者会見で伊藤さんは「こちらの主張のすべてを認めていただいたことについては満足しています」とコメント。代理人を務める山口元一弁護士は、名指しで中傷しなければ名誉毀損にならないといった大澤氏側の解釈が「身勝手」と評価されたことなどに「満足している」と述べた。
しかし大澤氏は、判決前から賠償金が55万円以下であれば勝利だなど独自の解釈をツイート。判決後も「勝訴しました」「7:3で俺が大勝しました」などと、「勝訴」だと印象付ける連投を行なっている。削除命令の出た投稿も削除されていないが(7月12日時点)、山口弁護士は、1日ごとにペナルティを科するなどの間接強制手続きを行なうこと、ツイッター社に申し入れをすることなどを検討していると明らかにした。
現在、社会課題に声を上げる女性に対するネットでの嫌がらせや誹謗中傷に端を発する裁判が続いている。#KuTooの活動で知られる石川優実さんは夥しい数の悪意ある応答に悩まされたうえ、自著に引用したツイートの投稿主から損害賠償などを求められたが、5月の判決で勝訴。6月には、SEALDs元メンバーの福田和香子さんもインターネット上での名誉毀損訴訟で勝訴している。判決後の記者会見で、福田さんは「女性ゆえにセクシズム(性差別)にも直面させられる」と語っていた。
法規制の対象になっていない「ネット上の暴力」にどう対処するか。課題は多い。
(小川たまか・ライター、2021年7月16日号)