東電株主代表訴訟で旧経営陣4人尋問も「責任逃れ」に終始
小石勝朗|2021年7月21日5:09PM
福島第一原発の事故で東京電力が被ったとされる22兆円の損害をめぐり、脱原発を訴える株主約50人が旧経営陣5人に対し個人の財産で同社に賠償するよう求めた株主代表訴訟で、被告のうち4人の尋問が7月6日、東京地裁で行なわれた。4人は「津波対策には関与していなかった」などと主張し、事故の「責任逃れ」の姿勢に終始した。
この日出廷したのは、勝俣恒久(元会長)、清水正孝(元社長)、武黒一郎(元副社長)、武藤栄(元副社長)の4氏。武藤氏は原告側弁護士の反対尋問などを、他の3人は被告側弁護士の主尋問を受けた。
武藤氏は原子力・立地本部副本部長だった2008年6月、担当者から同原発を高さ15・7メートルの津波が襲う可能性があるとの試算の報告を受け、4項目を挙げて津波対策の検討を指示した。しかし7月末に一転、対策を先送りしたと原告は主張する。
武藤氏は、津波水位を試算していることを同年6月の報告まで「全く知らなかった」とし、「何かを決められる状況ではなかった」と説明。提示した4項目は「(津波)対策をやると決めて出した宿題ではない」と強調した。
15・7メートルの前提になった、政府の地震調査研究推進本部(推本)による長期評価(地震予測)については「知見ではなくご意見」との認識を示した。土木学会によるそれまでの津波の評価基準を覆すデータや学説はなく、2回の会議で「信頼性はないという話になった」と主張。すぐに津波対策をとらず土木学会に再評価を依頼した対応を「自然な話」と正当化した。
朝倉佳秀裁判長が「それじゃあ推本がバカみたいじゃないですか」と問いかける場面もあったが、回答は変わらなかった。
武黒氏は原子力・立地本部長だった09年5月に、部下から15・7メートルの津波試算の詳しい報告を受けた。しかし、前提となる推本の長期評価について「仮定がいくつも重なったもので設計上の根拠に使えるものではない」と説明されたと主張。土木学会に再評価を依頼した「当時の判断は合理的だった」とした。