東電株主代表訴訟で旧経営陣4人尋問も「責任逃れ」に終始
小石勝朗|2021年7月21日5:09PM
【判決は来年3月にも】
08年に社長を退任した勝俣氏は会長になっても強い影響力を行使したとされるが、「会長は業務執行に携わらない」「口を出すことは控えていた」と自らの立場を説明した。推本の長期評価は「知らなかった」、社長在任中に津波対策の報告を受けたことも「ありません」と答えた。
勝俣氏は「14メートル程度の津波の可能性」への言及があった09年2月の会議に出席していたが、「(説明は)非常に簡易的。必要があれば対応を取ると理解していた」と釈明。最後に原発事故について「地域住民をはじめ多くの方々に大変な迷惑をかけた。安全性を最優先に事業を行なっていたが、事故を防ぐことができず痛恨の極みだ」と淡々と詫びた。
事故当時の社長の清水氏も、原発のリスク管理は原子力・立地本部長に委ねていたとし、推本の長期評価は「知らなかった」と述べた。09年の会議での14メートルの発言に対しても「専門技術的なことをすべて理解するのは困難」「会社の意思決定の場ではない」、15・7メートルの試算も「報告を聞いたことはない」と責任回避の釈明に終始した。
「安全性をないがしろにして設備投資を惜しむことはあり得ない」と強調し、「私自身、取締役としての注意義務を果たしてきた」と事故の責任を否定した。
地裁は結審へ向けた日程を提示。今後、7月20日に勝俣氏、清水氏、武黒氏への原告側弁護士による反対尋問があり、体調不良で延期になった小森明生・元常務の尋問は10月5日に実施される予定だ。裁判官による福島第一原発の視察は10月29日に、最終の口頭弁論は11月30日に開くことも決まった。判決は来年3月にも言い渡される見通しだ。
原発事故の経営責任を問う裁判は、提訴から10年近くを経て最終盤を迎える。
(小石勝朗・ジャーナリスト、2021年7月16日号)