東京五輪、迷彩服自衛官警備の理由とは
テロ対策口実の「治安出動態勢」狙う?
小西誠|2021年8月18日9:20PM
【自衛隊法などの脱法行為】
ここには「セキュリティチェック」や「街頭警備」は見当たらない。「会場外の交通整理」にしても、車両検問に近い行動は「協力」の範囲を超える。自衛隊による交通統制が許されるのは道路交通法114条の5で、外部からの武力攻撃による「防衛出動」時に限られる。「脱法行為と言わざるを得ない」と水島朝穂・早稲田大学教授(憲法学)は指摘する。
本来の警備や交通整理は警察庁が全国からの応援部隊も含めて約6万人を動員しているのに、なぜ自衛隊が共同して担うという事態になっているか?
背景には、2000年12月に自衛隊の治安出動の規定が大幅変更され、自衛隊と警察の全面協力態勢が作られたことがある。自衛隊の治安出動について「外部からの武力攻撃に当たらないような事案においては、一義的には警察が対処するが、警察では対処できないか、又は著しく困難な場合には、自衛隊の治安出動により対処」し、「自衛隊と警察との治安維持のための措置について暴動への対処を想定したものから、武装工作員等への対処をも想定したものとする」(自衛隊の治安出動に関する訓令の一部を改正する訓令)と改訂されたのだ。
簡潔に言えば、従来自衛隊の治安出動が想定した「暴動対処」に加え、「武装工作員対処」=テロ・ゲリラ対処へと移行したのだ。この改訂をはじめ、02年ごろまでに自衛隊と警察との「治安出動の際における治安の維持に関する協定」や同「細部協定」、同「現地協定」などが次々に作られた。現地協定とは、北海道警と陸自北部方面隊との協定をはじめ、全国の陸自各部隊と各県警との協定であり、以後毎年自衛隊と警察の治安出動訓練が行なわれていく。
自衛隊の治安出動訓練は2000年代から大きく変化している。テロ対策を口実にした新たな治安出動態勢づくりが、東京五輪でのなし崩し的過剰警備につながっている。軍事化社会への市民監視を怠ってはならない。
(小西誠・軍事ジャーナリスト、本田雅和・編集部、2021年8月6日号)