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ウィシュマさん死亡事件、入管庁報告書と記録映像が隠蔽するものとは

西中誠一郎|2021年8月27日8:19PM

8月17日の会見で黒塗りの開示文書を示す遺族代理人弁護士たち。(撮影/西中誠一郎)

昨年8月に名古屋出入国在留管理局(名古屋入管)に収容され、今年3月に亡くなったスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)に関する行政文書開示請求結果の記者会見が8月17日に参議院議員会館で行なわれた。

「開示文書はほとんど黒塗り。入管行政の闇そのものです」

名古屋入管から2日に送られてきた1万5113枚の黒塗りの紙が詰まった段ボール箱を前に、ウィシュマさん遺族代理人の指宿昭一弁護士は「秘密主義もここまでくるとまるで冗談」と呆れ返った。

黒塗り文書の請求には15万6760円かかったという。今年4月に弁護士がウィシュマさんの遺品を引き取りに名古屋入管に行った際、診療情報などウィシュマさんに関する文書提供を求めたが拒否され、翌月に情報開示請求をしたもの。遺族に対する診療情報の提供は、厚生労働省が医師法に基づき「診療情報の提供等に関する指針」を策定し、都道府県知事宛に通知している。

遺族代理人の高橋済弁護士は「医療情報は基本的に遺族に出さなければならないというのが厚労省通知の趣旨。なぜ法務省入管庁は情報提供を拒むのか」と批判。入管庁が内部調査のうえ10日に公表した「調査報告書」に触れ、「これでは真偽が確かめられない」と訴えた。

「報告書」は名古屋入管が保管するウィシュマさんの「被収容者診療簿」「看守勤務日誌」などが基礎資料になっている。だが今回開示された黒塗り文書の大半が「看守勤務日誌」で、その総数は1万4762枚に及ぶ。入管庁の調査チームはこれらの内部資料に加え、名古屋入管職員、庁内と外部の医療関係者、面会支援者など計62人から延べ139回の聴取を行ない、5人の外部有識者の意見を踏まえて「客観的かつ公平な分析・評価に務め」たと自画自賛する。

1月下旬から体調が悪化し続けたウィシュマさんへの入管職員による差別発言なども「報告書」では取り上げているが、入管側の対応や判断をめぐる責任の所在は一切示していない。ウィシュマさんについては「病死であるが、複数の要因が影響した可能性があり、具体的機序の特定は困難」と結論づけ、死因すら判明していない。他方で4月に公表した「中間報告」にない、2月15日の尿検査の結果が今回記載されたが、その数値からは病死ではなく栄養失調等による「餓死」の疑念も浮上している。

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