ウィシュマさん死亡事件、入管庁報告書と記録映像が隠蔽するものとは
西中誠一郎|2021年8月27日8:19PM
【「姉は入管に殺された」】
ウィシュマさんを撮影した入管施設の監視カメラ映像は彼女が亡くなる3月6日までの2週間、約300時間分が存在する。入管庁はこの開示も「保安上の理由」で長らく拒否してきた。だが「報告書」公表と同時に、編集した約2時間の映像を、上川陽子法務大臣の指示で「人道上の配慮」から遺族にのみ開示すると遺族代理人に急遽連絡。12日にウィシュマさんの遺族らが法務省を訪問した。
同日の訪問は予定時間を大幅に超過し、待機していた取材陣の前にウィシュマさんの妹ワヨミさんとポールニマさんたちが憔悴して戻ってきた。同行した指宿弁護士によると、冒頭に上川法務大臣と入管庁の佐々木聖子長官からの謝罪、丸山秀治出入国管理部長から「報告書」についての説明があったが、映像の視聴に弁護士が立ち会うことはできなかった。映像は1時間ほど視聴したところでワヨミさんの気分が悪くなり休憩。この日の視聴再開は断念した。
取材陣の前でワヨミさんは号泣。「姉は入管に殺された。助けることはできたのに、すぐ病院に連れていかず動物のように扱っていた。ここに人権はない。入管側に都合の良い箇所を編集した感じ。すべて見たい。非常に重要なビデオです。なぜ姉が死んだのか、これを見れば分かる。すべての外国人は見るべき。明日はあなたの番です」と訴えた。弁護団は引き続き代理人立ち会いでの映像の全面開示と映像データの提供、名古屋入管が保有するウィシュマさん関連の文書提供を法務省入管庁と法務大臣に強く求めていくという。
(西中誠一郎・ジャーナリスト、2021年8月27日号)