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タリバーンを孤立させれば報復につながる--“軍隊”を派遣していない日本だから可能な対話を
谷山博史|2021年9月2日11:20AM
今こそ「平和外交」の時
私が今一番恐れるのは、タリバーンによる報復だ。米国は9・11の報復としてこの戦争を始めた。また、和平を選択肢から排除してタリバーンを根絶やしにすることに固執したために、戦争が長引いてしまった。そして最後には逃げ出した。根絶やしにするとの意図のもとに、害虫のように殺されていったタリバーン兵がどれほどいたか想像してほしい。だから私は報復を恐れている。
カブール制圧以降、タリバーンは一貫して「報復はしない」と表明している。とても意外なことである。国際社会を意識してのことであるのは間違いないが、タリバーンが報復を原動力として戦ってきたことを考えると、にわかには信じがたい。しかし、これは希望でありチャンスである。だからこそ、国際社会はタリバーンを孤立化させてはならないのである。
国連やG20(主要20カ国・地域)の場で各国首脳は鳩首協議してタリバーン非難声明などを準備しているが、なぜ早くタリバーンとの対話を始めないのか。日本の首相はなぜ米国と連携して対応するとしか言わないのか。これは対タリバーン外交上、最悪の意思表示だ。今日本政府がなすべきはタリバーンとの正規の交渉窓口を作ることである。
主要諸国の中で日本だけがアフガン本土に“軍隊”を派遣しなかった。日本が他国と違うのは、ひとりのタリバーン兵もアフガン市民も殺していないということだ。日本がタリバーンからも一定の信頼を置かれているのはこの一点においてに他ならない。日本はタリバーンと国際社会を仲介する大義をもっている。このアフガニスタン危機において日本の平和外交のイニシアティブを発揮するべきだ。