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タリバーンを孤立させれば報復につながる--“軍隊”を派遣していない日本だから可能な対話を
谷山博史|2021年9月2日11:20AM
NGOの対話能力に期待
タリバーンが政権を奪取した翌日の8月16日、アフガニスタンの元JVCスタッフで私の盟友、サビルラ・メルラワールから2枚の写真が送られてきた。1枚は彼がその日、タリバーンの新知事を表敬訪問したときの写真。くつろいだ様子で話をしている。もう1枚は国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)の東部地域代表とタリバーンのNGOコミッショナーとの会合の写真。サビルラはいち早く知事に渡りをつけ、次にUNAMAを巻き込んでNGOとタリバーンとの対話チャンネルを作ろうとしている。NGOの活動と女性の権利の保障を何とか認めさせようと動いているのだ。
サビルラらJVCで長年活動したスタッフは、対話の重要性を体感してきた。村人の間に対話の場を作ることで対立と紛争を未然に防ぐ「ピース・アクション・プロジェクト」を立ち上げ、人々を分断する者には敢然と立ちはだかっている。
米軍がヘリから簡易ロケット弾をクリニックに落とした際は、国際会議の場で米軍に抗議して村での活動を止めさせた。政府がJVCのクリニックを選挙の投票所に使おうとした時は、拒否して使わせなかった。クリニックが武装勢力のターゲットになるからだ。米軍の発案で政府が村にコミュニティ・ポリスという民兵組織を導入しようとしたときは、長老たちと協議し、拒否を決めた。
サビルラらの自立した強い精神力を知るだけに、タリバーン支配下での彼らが直面する困難と苦悩の深さには想像を絶するものがある。しかし彼らなら必ず、タリバーンとの間にも対話のパイプを作り、少しずつではあっても人々の権利の保障をタリバーンに認めさせる実績を作っていけるはずだ。
(谷山博史・JVC顧問。JVCスタッフとしてタイ・カンボジア国境の難民キャンプやラオス、アフガニスタンなどに計12年間駐在。編著書に『「積極的平和主義」は紛争地になにをもたらすか?! NGOからの警鐘』(合同出版)、『非戦・対話・NGO 国境を越え、世代を受け継ぐ私たちの歩み』(新評論)など多数。2021年8月27日号)