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各党議員に聞くDV・性暴力対策
性交同意年齢は全員が 「引き上げるべき」
小川たまか|2021年9月3日7:14PM
今秋実施予定の総選挙では、性犯罪やドメスティックバイオレンス(DV)など女性に対する暴力への姿勢も議員を選ぶ重要な基準の一つだ。全国女性シェルターネットと刑法改正市民プロジェクトの共催で8月10日、オンライン上で行なわれた「議員フォーラム どう変える?日本のDV・性暴力対策」には与野党から9人の議員(立候補予定者含む)が出演。各議員の姿勢を知る場となった。
フォーラムは事前に各議員にアンケートを行ない、それに基づいて質問や議員の返答・解説がなされる形で進行。DVについては「DV防止法緊急保護命令の導入について」「保護命令の対象拡大について」「民間シェルターの位置づけと財政支援について」など5問の質問についてはほとんどの議員「必要だ」とし、「民間シェルター」について自民党の宮崎政久衆議院議員のみ「対等な支援機関として位置付ける必要がある」にマルをせず、「その他」とした。
これについて宮崎議員は、沖縄で20年間弁護士をする中でDV被害者支援に携わった経験を上げ、「(対等というより)民間をむしろメインに行なっていくことが、この分野では適切だと思っている。先進的取り組みをしている民間がリードしているところもある」と意図を語った。また、自身もDV家庭で育ったことを公にしている立憲民主党の福山哲郎議員は「改正案が早くできるよう超党派で取り組む」と意欲を見せた。
意見が分かれたのは、再改正に向けての法務省での検討会が終了し秋頃から法制審議会が開かれる予定の性犯罪に関する刑法について。論点のひとつである公訴時効の撤廃については半数が「撤廃すべき」、半数が「その他」と回答。
たとえば幼い頃に性虐待などの被害に遭った場合は特に、それが性被害だったと大人になってから気づくことは珍しくない。被害当事者・支援者の団体Springが2020年に実施したインターネット調査によれば、被害を受けてから被害だと認識するまでの期間は平均で7年半で、6歳以下での被害の場合は4割以上が11年以上かかっていた。しかし現状の時効は強制わいせつで7年、強制性交等罪で10年。改善の指摘はされつつも、宮崎議員や公明党の伊藤孝江議員など弁護士の経験を持つ議員からは撤廃に懸念の声があった。
伊藤議員はアンケートでは時効を撤廃すべきとしたものの「他の犯罪との兼ね合いでまったくの撤廃には懸念がある」と発言。ただ、幼少期の被害については時効の起算点をずらす、時効延長の方向で考えるなどの案は出ており、「(議論の中での)知恵の出し合い」(宮崎議員)といった声が聞かれた。
一方、「同意が無効になる年齢の引き上げについて(性交同意年齢の引き上げ)」は、「引き上げるべきだ」で全議員が一致。立憲民主党の議員だった本多平直氏がこの件について無理解な発言をし議員辞職したことで、福山議員が「お詫びから始めなければいけない」と謝罪する場面もあった。
このほか、「(性暴力は)被害女性に責任を転嫁し、加害者の目線で語られてきた。不同意(性交が罪になることを)明記というのは最低条件だと思っている」(共産党・池内さおり前衆議院議員)、「ハラスメント法案も(配慮義務に限定され)セクハラ禁止というところまで行かなかった。これを進めていくことが一つの手がかりになる」(国民民主党・田村まみ議員)、「施設にいたとき、生理があると『どうせ子どもも産まないのに迷惑だよ』と言われたこともあった。障害者など二重の差別を受けている女性に対して対策を考えていきたい」(れいわ新選組・木村英子議員)などさまざまな視点からの意見が述べられた。
全体として前向きな意見が多かったことに主催者のひとりは「社会の中でDVや性暴力の位置付けが少しだけ変わった」と感想を話していた。
(小川たまか・ライター、2021年8月20日号)