JR東海リニア工事説明会、「問題ない」強調に住民怒りの声
樫田秀樹|2021年9月7日3:41PM
【「調査掘進」が意味するもの】
低減策として27日の説明会でJR東海が持ち出したのが「調査掘進」だ。シールドマシンを試験的に300メートル掘進させ、地盤や地表への影響を確認し、さらに対策を練るというものだ。
市民団体「リニアから住環境を守る田園調布住民の会」は7月19日にJR東海を相手取り、工事差し止めを求める民事訴訟を提起した。同会の三木一彦代表は説明会で「調査掘進をそのまま本掘進への既成事実にするのではないか」と質問した。JR東海は「調査掘進することで安全対策が有効かを確認でき、次のステップに行くことができる」と回答した。
その2日後の8月29日、川崎市宮前区で行なわれた説明会でJR東海は「品川の調査掘進のデータを川崎の工事に活かす」と説明した。同日は品川区でも再び説明会が開催されたが、地質に詳しい元地学教師の男性が「ウソばっかり言っている!」と怒りの声を上げ、次のように述べた。
「外環事故はシールドマシンへの土砂の取り込み過ぎで起きたが、それはどの現場でも起きる。固結シルトと砂だから大丈夫とはよく言う。地層は1メートル先で変わるのに、たった300メートルの調査掘進でわかるはずがない」
27日の説明会では、崖の上にある自宅の横をリニアトンネルが通過することに不安を抱く大田区の女性が「陥落が怖い」と訴えた。だがJR東海は「安全工事のため調査掘進がある。崖でも問題ない」と言い切った。住民にすれば納得できるはずがない。冒頭で紹介した拍手は、こうしたJR東海の姿勢への批判に対して湧いたものだ。
一連の説明会はマスコミ非公開。27日の終了後、待ち受けた記者たちに三木さんは、その理由として、JR東海から「住民に忌憚なく意見を述べてもらうため」と言われたと説明。さらに「JR東海は私たちの不安に寄り添ってくれない」と訴えた。同社と住民との溝は深まるばかりだ。
(樫田秀樹・ジャーナリスト、2021年9月3日号)