【タグ】アフガニスタン
残照「我がアフガン」
本田雅和|2021年9月18日3:36PM
アフガニスタンは戦争ばかりしてきた国でもなければ、砂漠と石礫で覆われた荒れ地ばかりの国でもない。筆者の滞在期間中は、同国が内戦に明け暮れた時期と重なってはいたが、それでも訪ねてゆく村々には、山の懐で羊がゆっくりと草を食み、羊飼いの少年が人なつこく近づいてきてはカメラのレンズをのぞき込む。天日干しのアフガンキャロットをござに拡げていた農夫は、言葉の通じない異邦人のカメラバッグに、黙って小さな人参や干し葡萄を一杯になるまで詰め込んでくれた。
北東部には標高数千メートル級のヒンズークシ山脈が立ちはだかるが、その雪解け水が潤すパンジシール渓谷には緑豊かなオアシスのような村々があり、家族が農作業に精を出している。タリバーン支配地域の民家に宿ったときも、女性の居住区から笑い声や水汲みの音がにぎやかで、皆が平和に暮らしている様子が見て取れた。
朝夕に彼女たちが出してくれるチャイは番茶そっくりで旨かった。春にはあちこちでアプリコットの白や薄紅色の花が満開になり、甘酸っぱい香りが一帯に漂うのだ。
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