「晴海選手村」訴訟が結審
都有地9割引は適正か
片岡伸行|2021年9月28日11:46AM
東京五輪の「選手村」として使用された都有地を基準地価(1平方メートルあたり99万円=2017年7月時点)の10分の1以下(同約9万7000円)で売り渡すことを巡り争われてきた「晴海選手村」住民訴訟が8月31日、提訴から約4年を経て結審した。
東京都は16年12月、中央区晴海の約13・4ヘクタールを大手開発企業11社に総額129億6000万円で譲渡する契約を結んだ。これに対し都民が「都議会の議決も財産価格審議会の審議もなく、時価の1割以下で都有地を譲渡するのは、公有地を〈適正な対価なくして譲渡してはならない〉とする地方自治法237条に反する」と住民監査請求を起こしたが退けられたため、17年8月に提訴した。
裁判では▼都市計画決定をせず、都が地権者・施行者・認可権者の“1人3役”を演じ「個人施行の再開発事業」とした手法の是非▼「選手村要因がある」として開発手法で算定された譲渡価格の是非▼譲渡契約前に実施した大手開発企業側との事前協議は官製談合か――などが争点となった。
13回目となったこの日の口頭弁論で、原告33人を代表し中野幸則さんと埼玉大学名誉教授の岩見良太郎さんが意見陳述。中野さんは譲渡価格について「造成等に投じた費用(403億円余)すら回収できない不合理な価格」とし「都民に莫大な損害を与えた」と指摘。都市計画の研究者である岩見さんは「再開発には団体施行という制度がある」が、それをあえて個人施行とした真の理由は「異常な超安値での、デベロッパーグループへの払い下げを、都民の目を欺きながら断行する目的のため」で「前代未聞の異常極まる再開発」と批判した。一方、都側の弁護人は「官製談合との主張は名誉毀損」「選手村使用と分譲は政治判断」などと述べ、司法判断を求める住民訴訟自体に疑義を呈した。判決日は追って指定される。
(片岡伸行・記者、2021年9月17日号)