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南西諸島への自衛隊配備反対の連続シンポ
進む軍事要塞化に抗う住民
土岐直彦|2021年9月28日3:40PM
鹿児島県・奄美群島から沖縄県・沖縄諸島を含む「南西諸島」で軍事化が急速に進んでいる。「有事に犠牲になるのは結局、住民」と危機感を抱く島民たちと連携するジャーナリストや平和運動家らが、今年3月からオンライン形式で連続シンポジウムを開催、自衛隊配備による島々の軍事要塞化の実態を暴いている。
軍事ジャーナリストの小西誠さんが主宰者を務め、実行委員会形式で開かれている「島々シンポジウム」の第4回「沖縄本島編」は、9月12日に開かれた。
南西諸島では対中国戦略として、ミサイル部隊を主とする自衛隊配備計画が進む。パネリストの一人で日米の軍事戦略に詳しい沖縄選出の伊波洋一参議院議員は、同諸島での自衛隊配備が、安倍晋三政権による米国の対中国戦略に沿った「台湾有事」の扇動として展開してきたものだと強調する。
伊波氏によると、新しい米戦略構想は「海洋プレッシャー戦略」。第1列島線(九州―沖縄―台湾―フィリピン)沿いに展開する米軍と自衛隊(同盟軍の位置づけ)からなるミサイル部隊と、第2列島線(本州―グアム―パプアニューギニア)沿いに退避する米海軍・空母機動部隊の2段構えの布陣が特徴だ。「台湾有事」の場合、南西諸島配備の自衛隊が米軍とともに第1列島線に展開。通過しようとする中国艦艇をミサイル攻撃で封じ込める。第2列島線に構える米軍部隊は、中国の中距離ミサイルが届かない地点から自国や同盟国の部隊を支援する作戦だ。
米国は米本土に戦火を及ぼさない海洋限定戦争を想定している。最前線の日本(自衛隊)は「やられ役」だと伊波さんは断じる。戦場となる南西諸島では、中国のミサイル猛攻に沖縄戦時のような、住民が逃げ惑う事態が懸念されるという。
他のパネリストからも「日本は米国の目下の同盟軍。かませ犬のようだ」「沖縄が戦場になる現実性は高い」との批判の声が出た。
また、日米の軍事的一体化は基地共同使用や日常的な共同訓練・演習で拡大の一途をたどっており、都市型戦闘やジャングル戦などのほか、対化学・生物兵器防護、戦時医療などあらゆる分野で進んでいる実態も報告された。
沖縄平和運動センターの山城博治・前議長は、辺野古新基地建設問題に言及。同基地が完成すると「台湾有事のキーステーションになる」と、日米両軍の部隊が発進していくような将来シナリオを示した。
【「再び沖縄が捨て石になる」】
南西諸島への自衛隊配備は、2016年の与那国島の監視警戒部隊を皮切りに、ミサイル部隊が奄美大島(19年)、宮古島(19年)、石垣島(22年度)の島々に設置・計画されてきた。さらに、鹿児島県種子島沖合の無人島・馬毛島では米空母艦載機の陸上離着陸訓練(FCLP)移転と陸海空自衛隊の一大訓練基地化計画が同時進行している。
最近では陸上自衛隊・勝連分屯地(うるま市)にミサイル部隊を配備する方針が防衛省から地元に通告された。沖縄島への配備は取り沙汰されてきたが、反対運動を恐れ、通告を避けてきたとみられている。
米軍は3月、第1列島線沿いに対中国ミサイル網を敷くために、今後6年間で3兆円近くの予算を投じる案を米議会に提出。新しい中距離ミサイル(LRHW)配備も構想され、小西さんは事実上のミサイル戦争を招いてしまう「すさまじい状況だ」と警鐘を鳴らした。
一連のシンポは、南西諸島を舞台に何が進められているかを市民に知ってほしいとの思いから、小西さんが中心となって企画。「要塞化する琉球弧の今」を統一テーマに、3月に宮古島、5月に石垣島、6月に奄美大島を舞台に開催し、各地域の住民運動団体代表らが参加して現状と運動のあり方を論議。沖縄戦の教訓から「軍隊は住民を守らない」「日本はもう一度、沖縄を捨て石にしようとしている」との認識を共有してきた。今後もさらに続けるという。
(土岐直彦・ジャーナリスト、2021年9月24日号)
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