「日野町事件」元受刑者の「再審無罪」求め日弁連が集会
粟野仁雄|2021年10月5日5:21PM
1984年に滋賀県で発生した「日野町事件」元受刑者の「再審無罪」を求める集会が9月18日、大阪市で開かれた。再審を支援する日本弁護士連合会の主催。
酒店経営の女性(当時69歳)が殺害され金庫が奪われた同事件では滋賀県警が88年、店の常連客だった阪原弘さん(当時53歳)を逮捕。2000年に最高裁で無期懲役が確定した阪原さんは再審請求中の11年に75歳で死去した。第2次請求審では大津地裁が2018年7月に再審開始を決めたが、検察が即時抗告し、大阪高裁で決定についての審理が続いている。
集会で伊賀興一弁護団長は「大阪高裁は再審開始決定から3年2カ月で3回も裁判長が代わった」と報告。「1人は確定審で関わった裁判官だったので猛抗議して撤回させた。今の裁判長は三者協議を申し入れても電話口にも出ず棚ざらしにしている」と批判した。
阪原さんの長男、弘次さんは「84歳の母は父ちゃんの名誉回復をと言ってます」と支援を訴え、長女の美和子さんは「父は警察から『娘の嫁ぎ先に押し掛けるぞ』と言われて嘘の自白をした」と話していたことを明らかにした。
「冤罪」事件被害者の櫻井昌司さん(布川事件)や西山美香さん(湖東記念病院事件)、袴田秀子さん(袴田事件、袴田巌氏の姉)も登壇。元毎日放送報道部記者の里見繁・関西大学教授によるドキュメンタリー『つくられた自白―日野町事件の真相』の上映もあった。
冤罪に詳しい指宿信・成城大学教授は、裁判で「金庫の放棄場所を阪原さんが自ら案内した」として警察が裁判所に提出した現場検証写真のネガを弁護団が検証したところ、帰路で撮影された写真が混ざっていたと指摘。「(真犯人しか知り得ない)『秘密の暴露』は警察の捏造です」と語った。同裁判では一審の大津地裁の裁判長が、検察官に犯行時間帯を拡大させる提言をして冒頭陳述を変更させた、などの事実も指摘されている。
(粟野仁雄・ジャーナリスト、2021年10月1日号)